9月11日(土)
小泉純一郎首相の来伯日程が明らかになった。十四日(火)午前サンパウロ空港に到着する首相は翌十五日(水)午前、開拓先没者意霊碑に献花、日本館を見学後、日系社会代表と懇談する。移民史料館を訪問後は、アウキミン州知事主催の昼食会に参加し、午後にはブラジリアへ発つ。十五日には文協大講堂で歓迎会も予定され、首相を一目見たいという移住者が多く集まりそうだ。今回の来伯が、百周年に向けて、日伯関係を強化する大きな弾みになるのではと期待されている。
十三日、政府専用機で東京を出発する首相は、十四日午前に着聖。その足で日本政府が資金支援するチエテ川流域環境改善事業を視察し、サンパウロ市内のホテルで休憩。午後からは連邦政府と州政府主催の農業地帯視察に赴く。ロドリゲス農業大臣とアウキミン知事が同伴する予定だ。そしてJETプログラム元参加者と、さらに日本の経団連・日本ブラジル経済委員会の十三人らと懇談する。
翌十四日は午前からイビラプエラ公園の開拓者先没者慰霊碑に献花。続いてすぐ横にある、八月に五十周年を迎えたばかりの日本館を視察する。
その後、ブラジル日本文化協会、サンパウロ日伯援護協会、ブラジル日本都道府県人会連合会、日伯文化連盟、ブラジル日本商工会議所、ブラジル日本移民百周年記念祭典協会代表者らと懇談後、記念大講堂で行われる歓迎会(十五分程度)に出席する予定になっている。
十二日昼、文協小講堂に約百人の日系団体代表を集め、この歓迎会への人集めに関する説明会も開かれた。
首相の身辺警護の関係から、歓迎会に入場するには、事前に最寄りの日系団体代表に申し出ないと入場できない。当日は受付けで氏名と所属団体のチェックが行われる。
首相クラスが直接、コロニア向けに語りかけるのは、九〇年の竹下元首相以来とも言われ、大きな期待が集まる。
七四年の田中首相来伯時は、官僚が用意した原稿をその場で横に置き、十数分間にわたって自分自身の言葉でコロニアに語りかけたことで、強い印象を残した。「ワシャ、これを読まん。感じたままを言うと田中総理は言いました。あの時の話には本当に感激した」と網野弥太郎県連顧問は当時を回顧する。
一九八二年の鈴木善幸首相の時はコロニア主催の歓迎会で挨拶、竹下元首相来伯時には、ブッフェ・コロニアルでの歓迎会で挨拶があった。九六年の橋本龍太郎首相は特になかったので、今回は久しぶりのコロニア向けの言葉となる。
小泉首相は、八月初旬に訪日し、首相にも面談したアウキミン州知事主催の昼食会に参加、ここではブラジル社会向けの講演が予定されている。
午後には首都ブラジリアへ向け出発。百二十五人の連邦下議と二十二人の上議を抱え、連邦議会中最大規模の日伯議員連盟(小林パウロ下議)や、日系社会代表とも懇談する。
十六日午前はプラナルト宮で歓迎式典、ルーラ大統領との日伯首脳会談。その後、大統領主催の午餐会と経て、午後にメキシコ向けに出発する。
今回の来伯により、来年のルーラ大統領訪日に弾みがつき、〇八年の百周年へ向け、日伯関係を活性化させる契機になると期待されている。
膨らむ期待 宿題も多く
「いい時に来られますな、小泉首相は」と今年四十五周年を迎えた経済専門誌『実業のブラジル』の鈴木與蔵社長は歓迎の意を表する。「八年ぶりにブラジル経済も良くなっている。ブラジルのことをもっと大事にしなくちゃ、ということを分かって帰ってほしい」と期待を込める。
十五日の歓迎会を楽しみにするという岐阜県人会の山田彦次会長は「移民百周年には、我々が胸を張れるような日本政府のコメントと、何らかの〃カタチ〃がほしいですね。一過性で終わるのでなく、今後百年に続くような」と語る。
加えて、「四世問題の解決ですね」という。これは、デカセギの訪日就労が三世までに制限されている問題だ。現在、日本で生まれ育っている四世子弟らは、二十歳を過ぎて親の扶養から外れると、日本に滞在はできるが就労は不可だ。つまり、日本で学校を卒業しても、成人したら言葉の不自由なブラジルに戻らなければならない。
その他、「他民族はどのように自国文化を継承しながら移住しているのか、などの我々の参考になるような研究をバックアップしてほしい」と要望する。さらに、日伯の青年交流事業を政府間ベースで進め、親日家のブラジル人を増やす人材育成も希望する。
県連の網野顧問は「現在の日本政府や経済団体は中国を初めとしたアジアに向かっているが、首相来伯を機に、もっと南米にも目を向けてほしい」と語った。