9月14日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】硬直していたEU・メルコスル自由貿易交渉がEU側の全面譲歩で急転直下、セウソ・アモリン外相は十二日、パスカル・レミーEU通商代表とブラジリアで非公式折衝を行った。これまでEUは、ブラジル側が最も関心を持つ部分を除外した部分協定に固執していた。EUが全面協定に向け態度を軟化させたことで、両ブロックの交渉担当者らは十三日、ブリュッセルで会合を開き、懸案の二十項目については二十日に詳細発表を行う予定。
世界最大規模といわれる自由貿易協定が、十月までに決着の方向で動き出した。アモリン外相とレミー代表は十二日、双方が二十日までに詳細案を照合、検討し、一カ月以内に閣僚級会議で最終決着させることで合意した。完全合意に至るには国家安全保障などの問題もあるが、歩み寄りの努力は行う甲斐があると双方はみる。
EU側の譲歩は、アモリン外相の粘り勝ちといえそうだ。思えば長い数カ月だった。EU案は部分的自由貿易を主張して譲らず、ブラジルはEUとの通商交渉断念まで覚悟していた。
外相の連絡によりブリュッセル駐在の交渉担当者らは十三日、保留となっていた最重要事項についてEU側と再討議に入る。外遊強行軍の途中だったロドリゲス農相やフルラン産業開発相も立ち会い、交渉日程表を作成した。
レミー代表は十一月をもって、EU通商代表を退官する。EU側が要求していた、広範囲の市場開放と政府の資材購入への参加保障、投資環境整備、海運や銀行業務サービスへの参入問題解決が同代表の最後の奉公になる。メルコスル代表はEUに対し、特に農産物の輸入制限や関税外障壁を重視している。
悲願でもあった世界最大規模の通商協定は、急きょ現実味を帯び出し、今年中にも実現する見通しとなった。ただ、これまでの対EU交渉攻防戦はまだ勝敗を分けたわけではないので、今後はブラジル側関係閣僚の手腕に期待が集まっている。
ちょうど時を同じくして、ブラジル政府は日本から小泉首相の来訪を受ける。八〇年代から湯煎状態の日伯貿易に活を入れるらしい。首相来伯は九六年以来で、日伯新時代のさきがけになるといえそうだ。ブラジル外務省のフジタ・アジア局長の談話によれば、ルーラ大統領は〇五年に日本へ返礼訪問を予定している。
首脳会談では日本・メルコスル通商協定が議題に上ると予想される。メルコスル・EU自由貿易協定が最終局面に入り、これをバネにFTAA(米州自由貿易圏)も締結が間近いと予想されている。両協定が締結されると、日本製品が後塵を拝することにもなりかねない。
日伯貿易は七〇年代の蜜月期を境に凋落の一途を歩み、八〇年代後半のブラジル債務危機に最悪期を迎えた。その後日本も経済不況に陥り、ブラジルの公社民営化計画には参加できず外資ランクから低落した。
現在は、両国経済とも再生の波に乗った。〇四年に中国へ向けた熱気を、〇五年には日本へ振り向けたいと政府は考えている。日本にとって通商優先国はタイ、シンガポール、メキシコ、フィリピン、マレーシアで、ブラジルは〇六年に番が回って来るという。