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小泉首相が農業視察へ=グァタパラ移住地上空をヘリで=眼下に眠る笠戸丸移民ら=地元「先亡者に花束を投げて」

9月14日(火)

 「笠戸丸の先亡者に、上空から花束を投げてほしい」。十四日に午前に着聖する小泉純一郎首相が午後、農業視察にでかけるプラドーポリス近くにはグァタパラ移住地があり、首相の乗ったヘリコプターがその上空を飛ぶことになった。またプラドーポリスにあったサンマルチーニョ耕地に入った第一回移民船・笠戸丸の配耕者全員が、首相の父と同じ鹿児島出身者だったということもあり、この件を聞いた同農事文化体育協会役員らは、「供養のために花束を投げてほしい」との願いを語った。

 十四日午後、小泉首相はアウキミンサンパウロ州知事、ロドリゲス農業大臣らに伴われ、サンパウロ市から北北西に三百五十キロにあるプラドーポリス市を農業視察する。
 サンパウロ総領館の説明によれば、ブラジル政府と州政府の共催により、プラドーポリス市ではサトウキビ畑やオレンジ畑、アルコール工場の視察が行われる。
 同市は笠戸丸移民が配耕されたサンマルチーニョ耕地があった場所であり、すぐ隣には、やはり笠戸丸移民がはいったグァタパラ耕地があった。現在は、戦後日本人によって建設されたグァタパラ移住地があり、現在も日本人が農業分野で貢献しているため、首相はヘリコプターで移住地上空を飛行しながら視察する予定になっている。
 グァタパラ農事文化体育協会の川上淳会長は、「二つの耕地に入った笠戸丸移民には、首相にもゆかりのある鹿児島県人が多かった。わざわざ来ていただくのは大変光栄。無縁仏も多い初期の先亡者にとっては、一番の供養になると思う」と上空からの訪問を歓迎する。
 同移住地には、笠戸丸以来約四百柱の日本移民の無縁仏を祀った「拓魂碑」が建てられ、七七年に遺骨を埋葬した。
 一方、小泉首相自身の出身は神奈川県横須賀市だが、やはり政治家だった父、故・純也さんは鹿児島県加世田市万世小松原出身。鹿児島県には縁がある。
 また、笠戸丸移民が入った四耕地のうち、グァタパラ耕地とサンマルチーニョ耕地は、鹿児島県人が多かった。グァタパラには平野運平通訳率いる二十三家族八十八人(鹿児島県十八家族、高知県二家族、新潟県三家族)が配耕。
 サンマルチーニョ耕地に入ったのは、鈴木貞次郎通訳と全員鹿児島県人の二十七家族百一人だった。その後、両方の耕地の持ち主だったプラド家の名をとって、プラドーポリスという市名になった。
 グァタパラ文協の新田築副会長も、「空から視察される折り、花束一つでも投げてもらえば、大変な供養になると思います」と語った。「当日は文協の庭に、日の丸を広げます」とも。
 プラドーポリス市は人口一万三千人程度の、サトウキビとそれによるアルコール生産が主要産業の町。今回、ブラジル政府らはエタノールを日本に輸出する熱い期待をもって、この視察を計画したもよう。