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児童誘拐防止に挑む学校=実情に応じ独自の対策=被害者の2割半が17歳以下=親心突き易々と身代金入手

9月17日(金)

 【ベージャ・サンパウロ九月一日号】頻発する児童誘拐を未然に防ぐため、各学校で独自の対策が講じられている。防衛手段の性格上、詳細は校外秘となっているが、関係者の話によると、中近東紛争の際に要人誘拐の防衛専門として活躍したイスラエル軍の諜報部隊の元隊員がサンパウロ市内で経営する警備会社に、警備を委託している学校もある。児童や未成年の学生は無防備なため誘拐犯のターゲットとなり拉致され易く、当局は防犯心得を発表し警戒を呼びかけている。
 サンパウロ州当局の発表によると、サンパウロ市で今年上半期に発生した誘拐事件は三十五件で、うち九件の被害者が十七歳以下の学生だった。これは四件に一件の割合となる。さらに八月に入り、たて続けに学童誘拐事件が四件発生、幸いにも警察の極秘捜査で被害者全てが無事保護された。
 これらの事件で犯人ら二人が警官と射ち合いの末死亡した。また別の二人は逮捕されたが、警察の取調べによると首謀者は逃亡しているという。これにより首謀者が悪事を重ねる公算が強いと警察は見ている。警察はこれまで五十八人を逮捕し、五人を射殺している。さらに十八カ所のアジトを突き止めた。
 これまでの誘拐は中上流階層の要人が被害者となっていたが、身代金要求の交渉相手の家族が要領を得ないことから交渉が長引き、捜査が公になることもあって犯人らのリスクも大きかった。しかし学童の場合、無防備な上に体重が軽いため、易々と抱き上げて車内に押し込めることが出来る。その上、父親が子供の安全を第一に考えて、警察に通報せずに身代金を短時間で支払ってくれるということが犯罪多発の要因となっている。
 これを受けて、各校とくに被害にあった生徒が通う学校は独自の防衛策を講じている。ある学校では、イスラエル特殊諜報部隊の元将校がサンパウロ市内で経営する警備会社と契約した。警備員らは校舎脇に駐車した装甲車内で、校内外に設置した七十二のモニターを見ながら警備をしている。さらに三十六台の送迎バスにもモニターを設置し、その上で車内の会話がキャッチできる盗聴器を据え付けている。その車体の屋根に学校名を表記し、異変が起きた場合にヘリコプターが上空から容易に識別できる様にしてある。
 また、生徒数五千三百人のある私立校では七十二台の監視カメラの他、直接雇われた警備員百人が校舎内を巡視するのに加え、無線電話を携帯した私服警備員が校外の街路や街角を巡視している。さらに別の学校では敷地内に送迎用の父兄の車を乗り入れさせて学童の乗り降ろしをしている。また伝統ある名門校では、これまでユニフォーム姿を誇示してきたが、上着で学校名を隠すよう指導している。
 当局では防犯心得として次の点を挙げている。
▼一人で登下校をさせないこと、校内、あるいは校門に最も近い所で車を乗降させる。
▼高級車は使用しないこと。防弾ガラス付きの車や護衛車であれば構わない。
▼生徒を乗降させる場合、周囲に注意すること。不審な人物や車がある場合、警官や警備員の横に停める。
▼送迎のコースを常時変更する。また、出発時や到着時を変更すること。
▼後をつけられた場合、ショッピングなどの駐車場に入り、警官を呼ぶ。自宅に直行するのは危険。
▼学校側に一人で下校させないよう要請しておく。
▼子供に見知らぬ人と口をきかない様に徹底させる。道や物をたずねられても逃げること。
▼子供や使用人に家庭内のこと、とくに金銭に関わる話を外でさせないこと。また子供に電話を受けさせないこと。犯罪人は言葉巧みに子供から情報を聞き出す。
▼万が一子供が誘拐された場合、すぐに警察に通報すること。(犯人が脅迫しても)当局では適切に対応できるよう訓練されている。