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コラム 樹海

 ブラジルで読まれた祝詞が、日本で発行された『祝詞必携』(のりとひっけい)という本に三十編収録され「資料として価値がある」と高く評価された。書いたのは歌詠みで『椰子樹』会員、上妻(こうずま)博彦さん(サンパウロ在住)。もちろん神主である▼祝詞をつくるにあたり、祓う対象の来歴、現状、関係している人などをきっちりと取材する。ノンフィクション(虚構でない)文を書くのと同じといえば、多少誤解を招くかもしれないが、要は、新しいニーズ(必要)に応えなければならない▼上妻さんの収録された祝詞は、昭和天皇平癒祈願祭、斂葬の儀遥拝詞、神前結婚式、厄祓祝詞、工場清祓、厨房清祓、起工式、商売繁昌祈願祭、上棟式などいずれもブラジルで作文され、読まれたもの▼祝詞には基礎がある。これを踏まえている。発端文から始まり結尾文に至るまで、来歴の紹介、感謝があり、目的が述べられ、祈願されるのである。だから歴史がわかり、資料的価値がある、といわれる▼「上妻祝詞」にはポ語のカタカナ表記がある。例えば、工場清祓では「此処サンタ・クルース街の甘(うま)き所を厳(いつ)の斎庭(ゆにわ)と祓ひ清めて、神籬(ひもろぎ)刺し立て招(を)ぎ奉(まつ)り坐(ま)せ奉(まつ)る――」と始まる▼このお祓いの年月日、工場の来歴が祝詞のなかで記録、紹介される。だから、資料価値があるといわれるのだ。雰囲気は詩的でさえある。上妻さんの雰囲気そのものでもあろう。(神)

04/09/22