9月24日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】輸出産業にかげりが生じている。企業の長年にわたる地道な努力が実り、世界のマーケットに定着した感のあるブラジル産品だが、輸出の増加に伴い、船積みや輸送設備の貧弱さが表面化した。これにより契約期間内に船積みが履行できなかったり、船賃の高騰で競争力を失ったりしてせっかく、これまで培った国際信用を失う局面に立たされている。輸出を主流とする企業は軒並み目標を下方修正し始めた。これにより経済成長は鈍化し、生産や失業問題に波及する懸念も出てきた。
現在、輸出のネックとなっているのが、積み出し港まで輸送する道路の悪条件と鉄道の不備、加えて肝心の港湾設備の粗悪さだ。さらに輸出の増加に伴い、定期航路船は船賃の高い物から優先していくため、船積みスペースが取りにくく、港で一ヵ月以上もスペース待ちをする品物が続出している。いっぽうで臨時便のいわゆるノン・コン(船賃非同盟船)は、現地の代理店が入札方式で船賃を決める方式を採っている所もある。さらに深刻なのがコンテナーの入手だ。ブラジルはコンテナーを保有しておらず、輸入で空になったのを借入れているが、輸入の減少で絶対数が不足している、現状では輸出品用コンテナー三本が必要なのに対し輸入コンテナー一本の割合となっている。
輸出停滞の最大の原因となっているのがラテン・アメリカ圏内最大のサントス港で、同港はブラジルの輸出総量の三分の一を取り扱う。しかし港湾設備は一九八六年以来不変で、改修工事は一切行われていない。当時は一年間二千六百トンの品物を取り扱っていたが、今日は七千万トンに達する。港湾管理局は、「毎年の予算は維持費で消滅し、とても改修どころではない」と語っている。また、貨物の一三・八%が鉄道輸送、七三%がトラック輸送、残りがパイプラインによる液体輸送によるもので、鉄道路線の不備がパニックの原因と指摘する。トラック輸送の場合、現状では二十四時間内に六千台のトラックが港湾内で往き来し、駐車スペースもない有様となっている。
これを受けて大手企業はサントス港から逃避し始めた。フォルクスワーゲンはリオ港、サンセバスチアン港、パラナグア港に船積みを分散している。包装の大手ブラスラッタは自社工場に近いリオ・グラジ港を使用し始めた。
いっぽうで工場がサントス港周辺の企業は遠方の港への輸送でコスト・アップになることと、仕向け地への配船がサントス港に限られることから、港を変更できない状況にある。カード紙を輸出しているパピルスでは、南ア向けに昨年二百万ドルの実績があるが、今年はわずか十万ドルとの予想を立てている。原因は船賃がトン当たり九十ドルの値上げとなり、他国と競合できなくなったためで、セラミックの大手ギョウトクではイタリア、スペイン、トルコの近場の顧客でさえ船積みに一カ月以上要するため、契約破棄の話も来ているという。農薬噴霧器メーカーのグァラニーは今年二〇%増の一千万ドルを見込んでいたが、下方修正を余儀なくされた。同社によると二カ月毎の船賃の値上げで競争力がなくなっている上に、品物の到着が遅いことで信用を失っているとのこと。
苦肉の策で軽量の品物は飛行貨物便を利用しているが、各便とも九九%の予約済みで新規参入の余地はない。