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血縁よりも能力重視=ジャクト・グループの西村ジョージ会長=商議所主催「2世成功者に聞く」=世襲の難しさなど説く

9月29日(水)

 ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)企業活動委員会(石川清治会長)が主催し、好評の「2世成功者に聞く」。シリーズ三回目は農機具製造などで知られるジャクト・グループの西村ジョージ会長を特別講師に招き、二十三日午後、同会議所で開かれた。八〇年代の倒産危機を乗り切った経緯や、世襲の難しさなど興味深い話が約四十分間にわたって続き、出席者は熱心に聞き入った。
 この企画はブルツリーホテルの青木智栄子氏から始まった。第二回はサンスイの本田剛氏で、今回ジャクトの西村会長が企業経営の秘訣などについて語った。
 実父は同グループの創業者西村俊治氏。五人兄弟の末っ子だ。大学卒業後小さな機械メーカーを経てジャクトに取締役製造部長として入社した。だが父親が一線を退き、兄弟五人にバトンタッチした八〇年代始め、内部分裂や倒産の危機に陥った。
 「父が引退したとき、今後の会社運営を話し合うため、兄弟五人で一週間の予定でホテルの会議室を借りた。しかし初日の会議を始めて十五分もしないうちに話し合いはもつれてしまった。腹を立て帰った兄弟もいて、先が思いやられた」
 そこで経営コンサルタント二社と契約。だれがリーダーとしてグループを運営していくのにふさわしいかを公平に決めようとしたが、「兄弟全員を納得させるのに結局一年もかかった」という。
 会長によると、創業者から二代目に上手く引き継がれて成功するのは三〇%で、二代目から三代目に引き継ぎ成功するのはわずか七%。「三世代の間には九八%近くの企業が消滅する」。世襲経営の難しさが分かる。
 現在グループは執行役員制と社外重役によるコーポレート・ガバナンス(経営審議委員会)を導入し、社外の意見を取り入れて視野の広い経営を行っている。
 「兄二人だけがグループに残って執行役員をしている。だが、結果を残さなければ退社させられるので、たとえ創業者の息子であっても真剣に営業活動に取り組まなければならない」
 今後の課題は次世代への引き継ぎをスムーズに行うことだ。経営参加を望む三代目に対し、会長は「リーダーとしての実力を身につけなければ、たとえ一族であっても絶対にポストは与えない」と強調。「企業存続には企業理念が確立していないと続かない。ジャクトの理念は、最新技術の農業機械を農家に提供し続けること」と続けた
 さらに、創業者の理念である「企業は人づくりから」も肝に銘じ、MBA(経営学修士号)の取得を奨励、現在八十人が勉強中だと締めくくった。 
 【ジャクト・グループ】
 本社はサンパウロ州ポンペイア市。六社からなり、従業員総数は二千六百人。〇二年度の売り上げは三億八千万レアル。世界初のコーヒー収穫機、各種の農薬噴霧器、散水車、潅漑用ホース、ノズルや下水処理用装置など農業機械製造では追従を許さないメーカー。世界八十カ国に輸出しており、製品の品質で高い評価を受けている。