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変貌するブラジル農業=最先端技術を導入=IT駆使し世界市場を先取り

10月6日(水)

 【ヴェージャ誌】ブラジルの歴史は、農産物の歴史ともいえる。植民地時代にはパウ・ブラジルの植林に始まり近代アグリビジネスまで、各農産物が一時代と栄華を築いた。しかし、どれも単一農産物であったため、輸出先市場で何かが起きると生産地を直撃してきた。
 フランスの歴史学者フェルナン・ブロウデ氏はその著書「文明史」の中で、ブラジルの興亡を次のように記述している。パウ・ブラジル、砂糖、コーヒーがいずれも一時期、黄金時代を築きその後にバブル崩壊が起こり、貧窮のドン底に落ちたのは、ブラジルを始め途上国の通例であった。
 ブラジルの産業はこれまで、綱渡り式で不安定、予測不可能、全壊的要素を含んでいた。不安定な経済組織から抜け出すには、生産者が結束して事前調査と先端技術、投資の三拍子が必要だ。ブラジルのアグリビジネスが、三条件を克服していることは幸運だ。
 ウルグアイ国境からオイアポッケまで生産方式は多岐にわたるが、共通するものがある。海外市場と直結した農業生産を行い、安定した利益を得ていることだ。南部三州とサンパウロ州、ミナス州、中央西部、最近は北東部も加わりブラジル経済のけん引車になっている。今回の産業サイクルは、過去のものとは異なる。
 アグリビジネスによる輸出は、従来の都市部と地方部という境界線を消し死語になった。百姓というと、時代に取り残された人たちを想像した時代は終わった。アグリビジネスの発展により百姓と呼ばれた人たちは、グロバリゼーションの最先端で毎日、ITで世界の穀物市場を凝視している。
 過去五年は、GDP(国内総生産)の倍率で農業が成長している。ブラジルの農業技術は大豆、砂糖、綿、柑橘で世界の最先端にある。一世帯の労働力で生産する家族農業は終わった。一人当たりの生産量は、飛躍的に伸びた。ほとんどの農作業は、飛行機で行えるようになった。牛肉と鶏肉では世界最大の輸出国。ただ残念なのは、世界相場の操作法を知らないことだ。
 生産者であると同時に、ソフトウエアと経営管理、農業技術の専門家で、常にハイテクに挑む中流階級である。生産者は、アグリビジネスの派生産業へも進出している。農場に住む生産者は、ほとんどいない。コロノの家は、兵どもの夢の跡となり草の中。農場の従業員は都市から、専用バスに乗ってやってくる。
 地方では都市と考え方が違う。ドルが高騰すると、どこでも祝杯が上がる。輸出した大豆の受取金が、増額するからだ。オーストラリアの砂糖が不作だ、米国の大豆が、ヴェトナムのコーヒーが、パキスタンの綿がとニュースが入ると、町は飲めよ食えよの騒ぎ。
 生産者はITでシカゴの穀物市場の動きで来年の投資計画を作成し、同業者らと情報交換を行う。蒔く刈るだけの農業ではなく、利益計算と金利計算を綿密に行う。特に外国市場の動きと傾向には敏感。どこの生産者もGPS(全測位システム)を取り入れている。GPSから送信する宇宙写真は、読み方の技術が要る。ここまで習得すると、農業生産者とはいい難い。
 米国から多数の生産者が視察のために、やって来る。ブラジルが、熱帯農業を完全に把握しているのを見て驚嘆する。米国でも農産物補助金制度が、遅かれ早かれ廃止になることで、不安感が生産者を覆っている。農業補助金の廃止は世界の趨勢であり、聖域や特殊事情が通用しなくなるのは、自明の理といえそうだ。