佐々永治さんが一日、ガンのため永眠した。
いつも背筋を伸ばしシャンとしていた。髪の毛は奇麗に白に染まり、気品が溢れ、誇りに満ちていた。ガルボン・ブエノ街でばったり出会ったときのこと、嬉しそうににっこりと微笑んだのが忘れられない。体全体に優しさが滲んでいた。
それは、死を直前にした人だけが持てる温かみだったのかも知れない。
七月に来伯した際には、すでに末期の前立線ガンだった。
「日本の心がよみがえる」。〝終戦の日に送る日本人心の歌〟の録画テープを見たとき軍歌を歌う軍服姿の青年に深い感動を覚えたそうだ。
「自分自身との闘い――」。そう言い、体に鞭打ちブラジルを訪れた。そこに求めていたのは日本の心だったのかもしれない。享年七十三歳。 心よりご冥福をお祈り申し上げます(達)
04/10/6