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いまどきの日本の若者には珍しい=勤労精神発揮する19歳=コチア農校で自費研修=浪速っ子の大野君=南米諸国の同僚たちも注目

10月9日(土)

 サンパウロ市から北東に約八十キロ、コチア農業学校で今年の六月から自費研修に励んでいる日本の若者がいる。同校で研修中の南米諸国の同輩たちから〃勤労の鑑〃として注目を集める。生まれも育ちも大阪という純浪速っ子の大野亮君、高校卒業の十九歳だ。父親が亮君と同じ年代の時に、フィリピンで一年間、初めての海外生活を体験して母国(日本)の良さを自覚したという。自分と同じ体験を息子に勧めた。海外生活期間は、大学に進学するまでの半年間、ということで、今年の六月から十二月までとなった。
 父親から〃海外〃という言葉を耳にした瞬間に〃ブラジル〃が脳裏に浮かんだ、という。
 特別な理由があったわけでも(ブラジルに)知人がいるわけでもなかったが「〃ブラジル〃へ行こう」と思った。そこで、インターネットでブラジルを検索したら「NPOチャレンジ・ブラジル」が画面に出たので、その団体を頼りにサンパウロに来た。行き着いた所がサンパウロ新聞社だった、という次第だ。
 この団体の理事長の鈴木雅夫さんがサンパウロ新聞編集局長だったのだ。「NPOチャレンジ・ブラジル」は日本に住む、自称〃ブラキチ〃が立ちあげた民間組織で、東京都の認可を得ている。日伯交流の橋渡しを目的としている組織だ。外国語は全然できないが、できるだけ苦労をしたい、外人と交流をしたい、異文化体験をしたい、と希望を鈴木理事長に率直に伝えたところ、ブラジルだけでなく、近隣諸国の若者との交流もできるだろう、ということで、コチア農業学校を紹介され、着聖三日目にジャカレイ(コチア農校所在地)に来た。
 コチア農校ではオイスカ・ブラジル総局が米州開発銀行の支援を得て、南米農業後継者研修を行っており、今はペルー、ボリビア、パラグァイ、ブラジル四カ国の男女研修生四十四名が自然農法を中心に実技研修に励んでいる。「最初のころは言葉も文化の違いも分からずに、自己嫌悪に陥り、二~三日寝込みました。そしたら、仲間のみんなが心配してくれたので、頑張る意欲を取り戻しました。今は楽しい毎日ですよ」とくったくがない亮君だ。
 頭を丸坊主にしているのは、三歳から厳しい柔道道場に通い、坊主頭が規則だったので、その延長で(坊主頭が)日常になっているという。
 苗木や花の仕事が好きなので、育苗センターで樹木や花の苗木作りを手伝っている。この育苗センターは日本の経団連自然保護基金の助成で作られたものだ。一緒に作業をしているルシアノ君(パライバ州)とアルネルソンくん(パラー州)は「リョウは良く働くよ。朝早くから夕方遅くまで仕事をして、夜はポルトガル語の勉強に熱中している。意欲がすごいね」と脱帽しているように、朝七時のカフェ・ダ・マニャンの前に、育苗センターでひと汗を流す毎日(菅原エドワルド教官評)だ。
 親の指導と柔道で身につけた規律が勤労精神を育んだようだ。寮は六人部屋で仲間と一緒だ。日本では働かない若者が増えて社会問題となっている中で、南米大陸の一角で勤労の模範となっている十九歳の日本人がいることは日系コロニアにも朗報だ。