10月12日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】国際原子力機関(IAEA)は九日、アングラ第三原子炉の増設について、遺憾な計画と決定を下した。従ってブラジルに対し国連安保理の常任理事国入りも不適切と表明をした。IAEA査察団はブラジルが考えている原子力計画は今後、国際的な懸念を引き起こす可能性があり、その危険性はイラン並みでブラジルも札付き要注意国の仲間入りだとした。米政府は九日、ブラジルが戦略的な目的がないことを信じると声明を発表した。
IAEA査察団は安保理常任理事国入りを目指すブラジルが、高水準の核保有計画を企むのは遺憾であるとの声明を発表した。IAEAの見解では、原子力発電によるエネルギー確保目的を越えるものとした。
IAEA報道官は、常任理事国入りへの影響について公式発言を拒否した。安保理問題は政治問題であり、IAEAの権限外のことであるという。しかし、査察団は驚きを隠せなかった。国際政治の舞台でブラジルが核保有国として君臨するか、核保有原則に新たな協定を設ける意図があったとは意外であったとした。
イランの核戦略で国際社会が最も恐れている事態が、ブラジルでも密かに計画されていたと、IAEAは述べた。ブラジルの核戦略が、民主政治と人権擁護を旗印とし常任理事国入りと同時進行をしていたのか真意を知りたいと追及した。
カンポス科学技術相は、降雨不足による水力発電のリスクと環境省不許可による発電所建設の計画頓挫を補うため、第三アングラ原発が計画されたと述べた。安保理の常任理事国入りとの関係は否定。政府の狙いは、第三のエネルギー確保による国家大増産計画であったとしている。鉱動省は声明内容の思案中だ。
原子力専門家でサンパウロ州環境局のゴールデンベルグ長官は、IAEAの声明は誤解だと一蹴した。ブラジルの原子力計画は、国際間で公認され何ら物議をかもしていないインドやパキスタンと同類のものであるとした。また原子力計画の草案者であるバルボーザ原子物理学教授は、ブラジルが開発した遠心分離機が従来のシステムと異なるので理解されなかったとみている。
ブラジルは核拡散防止条約の署名国で条約順守の義務はあるが、新規技術の公開義務は国際条約のどこにも全くないと同教授は弁明した。国際条約で何ら束縛を受けない新遠心分離技術に、難癖を付けて公開させようとするIAEAの策略であると反駁した。
政府はIAEA査察団に対し核燃料の出入管理設備は公開したが、遠心分離機は盗作防止のため見せなかった。米戦略専門家の間では、ブラジルは乗るか反るかの大博奕をしているとみている。ブラジルが独自開発した超格安の遠心分離技術を、常任理事国入りへの切り札に使うという見方だ。
このブラジルの外交駆け引きには、リスクがあると米関係者はみる。既常任理事国の五カ国がブラジルの態度を、どう判断するかにかかる。下手をすれば、ブラジルの常任理入りは二〇二〇年へ保留される。