10月12日(火)
サンタイザベル・サントアントニオ日伯協会を辞した一行は午後一時、ポウザーダ・カリブレーで昼食をご馳走になっていた。
「これがアマゾンのフェイジョアーダです」と紹介されたのは、MANICOBA(マニソバ)という食べ物だった。
「馬糞のようでしょ」。事情通、アマゾン・トラベルの北島義弘社長は冗談めかすが、食物繊維がいっぱい浮かんだ真っ黒な汁という外観からは、まさにその通りの印象を受ける。名前だけ聞いたら、チベットの蕎麦かと思うが、ポ語の名称がこれだ。
牛や豚の肉や内臓を、マンジョッカに似たマカシェイラの葉と一緒に煮込んだものだ。北島社長いわく「煮込めば煮込むほどいい味になる」そう。インディオ料理起源のスタミナ食として有名なようだ。
アフリカ黒人奴隷の料理文化の強い影響を受けたバイーア州と違って、パラー州は先住インディオの影響を受けている。
屈強な体格のバス運転手二人が、油ご飯に例のマニソバを山盛りよそり、さらにマンジョッカ粉をかけている。他にも色々料理があるが、わき目もふらずマニソバのみだ。
実際食べてみると、これが美味い。少々苦味があり、好き嫌いは別れそうだが、慣れたらクセになりそうな味だ。食通のご婦人たちも、さすがに最初こそ敬遠気味だったが、最後の方はすっかり器が空になっていたから〃合格〃だったのだろう。
さらに、PATO NO TUCUPI(アヒルのトゥクピー味)にも手を伸ばす。少し酸味があるスープで煮込んだアヒル肉で、あと味がピリッする。トゥクピーとは、北伯の〃しょうゆ〃とも言うべき調味料で、マンジョッカを砕いて粉にした時に出る絞り汁を過熱発酵させて毒素を抜き、ピメンタを加えた乳白色の液体だ。あらゆる郷土料理の味付けに使われるという。
なにが舌にピリピリするのかと思ったら、ジャンブーという菊科の植物のせいだと言う。少し舌が痺れる植物だが、独特の味があるため愛好されている。
その他、子エビのピロンやら、亀の煮込みやらの郷土食を堪能する。
昼食には出なかったが、庶民食としてTACACA(タカカー)も有名だ。マンジョッカの絞った汁の底に沈んだデンプン質で作った透明なゼラチンに、トゥクピーで味付けしたスープをかけ、子エビ、ジャンブーと共に、クイアというアマゾンひょうたんで作ったお椀に入れて出す。ヌルッとした独特の食感。街角のあちこちで楽しめる。
デザートには、真っ黒いアサイをドンブリにどさりと入れ、砂糖とタピオカをぶち込んで素早くかき混ぜる。これもバス運転手の直伝だ。こってりしており、デザートにしてはこくがある。口に含んで、どことなくアズキを思い出す。
サンパウロ市でもアサイ・ナ・チジェーラ(アサイのシャーベット)としてあちこちのバールにも置いてあるが、やはり原産地で食べる新鮮なアサイはうまい。
これはアサイ椰子になる小さな実の皮部分だけこそぎ落とし、集めて食するもので、それ自身は真っ黒なドロッとしたもので、甘くもしょっぱくもない。北伯の貧困層はこれにマンジョッカ粉を山盛りふりかけて、主食としても食べるそう。ビタミンや鉄分が豊富に含まれている。最近は北米にも輸出されており、そのうち日本でも賞味される日がくるかも。
そういえばマンジョッカ粉も、粒が大きくてカリカリしており、それ自身の味が強い。サンパウロ市のように肉に振りかけるというよりは、スープやアサイのような汁物にどさりと混ぜて食べないと喉に詰まりそうだ。
「やっぱりブラジルはデカイ。同じ国内でも、外国みたいだね」との感想が、あちこちのテーブルで漏れている。
つづく(深沢正雪記者)
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