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移民のふるさと巡り=赤道の4都市へ(12)=ピラルクの干物、丸めて輪切り=女性らしっかり買い込む

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10月19日(火)

 翌朝、九月二十日、ふるさと巡り五日目。八日間の旅も、とうとう後半に折り返した。午前八時頃、ホテルをチェックアウトしサンタレン市営市場へ。
 一メートル半ほどの巨大なピラルクの干物が目を引く。現地では〃ブラジルの鱈(たら)〃とも呼ばれ、食生活には欠かせない白身魚だが、実は一億年前から生息する貴重な古代魚だ。絨毯のようにクルクル丸めて縛り、輪切りにして計り売りする。グルメなご婦人がたはしっかりと家族へのお土産に買っていく。
 カスターニャ・サプカイアという、ボーリング球大の〃どんぐり〃の中に、カシューナッツの様なのが入っている珍しいものもあった。市場前の船着場には小船が無数に停泊中。ここで買い出しをして支流一帯に行商に行くようだ。
 続いて市立文化センター・ジョアン・フォナへ。紀元前一五〇〇年前からこの地域に住んでいたインディオのタパジョーズ族の石器、土器の展示されている。ガイドによれば、かつてここの原住民には偉大な人物が死んだあと、骨を砕いて、トウモロコシ酒に混ぜて飲む習慣があった。そうすると故人の知識や勇気が飲んだ人に伝わると信じられていた。
 また、女性戦士で有名なアマゾン族が使っていた蛙の形をした石器、ムイラキタンも多数展示されている。男性が女性戦士に愛の証しとして贈るもので、女性はそれを額に布で結わえ付けていたというロマンチックな一品。残念ながら、なぜ愛の証しが蛙の形をしているのかは不明だそうだ。
 その他、ブラジル初の当地女性市長(一九三五―三六)の肖像画など、珍しいものがあった。
  ◎    ◎
 一行はみたび空港におもむき、正午過ぎ、最後の目的地マナウスへ向け離陸した。
 約一時間で到着。空港ターミナルで昼食を済ませ、バス二台に分かれて、マナウス市内から四十一キロ地点にあるエフィジェニオ・サーレス移住地へ向かう。
 車中、のっけから「今日は割と涼しいですね。ほんの三十六度です」というATS旅行社のガイド高橋雄一さんの言葉に一同はエッ!と驚くが、「だって昨日は四十二度ありましたから」と言われ、納得。
 一説に、アマゾンに四季はなく「暑い」か「クソ暑い」だけだというが、地元はそれなりに区別している。六~十一月が夏で、十二月から五月が冬だというので、サンパウロ市とは逆で、むしろ日本に近い。
 「最低気温は二十度ぐらいで、みんな『寒い寒い』とふるえます」とのこと。年に一回、「アンデス降ろし」が吹くと〃二度〃になることもあるという。灼熱のアマゾンで、二度とは…。
 マナウス市役所ホームページによれば、アマゾナス州都マナウス市は人口百五十万人(一説には百八十~二百万人)と、州全体の人口二百八十四万人の大半を吸収する工業都市だ。人口の八割はカボクロ(先住民と白人の混血)で一割が白人、残り一割が黒人や日本人などだ。
 ここは、河口から千六百キロをさかのぼった地点だが、海抜は四十二メートルしかない。さらに二千キロさかのぼったペルーのキトでも海抜百メートルしかないことを思えば、アマゾン川の起伏がいかにゆるいか分かる。
 ちなみに、北海道北端の稚内から沖縄本島の那覇までの直線距離が約二千六百キロだから、それより千キロも長い距離を、高低差わずか百メートルで悠々と流れるわけだ。
 ガイド高橋さんは「アマゾネンセの夢は山を見ることです」というが、分かる気がする。
つづく(深沢正雪記者)

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