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米国が綿補助金問題を再燃=WTOに再審要求=ブラジル政府は受けて立つ構え=輸出金融も俎上に

10月20日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】米政府は世界貿易機関(WTO)に対し十八日、綿補助金に関する対伯敗訴で控訴し再審を要請した。米補助金制度は、WTOが許可する範囲のもので国際相場を歪めていないと抗弁をした。判決は三カ月以内とされ再度米政府の敗訴となった場合、二日の大統領選に大きく影響するとみられる。伯外務省は、再審抗争の準備に入った。前回調停で不明瞭であった部分の再審についても、外務省は強硬抗戦の構えだ。

 ブッシュ米政権はWTO裁決の実施延期を取り付け、補助金敗訴に対する再審手続きをジュネーブで行った。ブラジルは米政府の補助金制度と輸出金融制度が、著しくブラジルの綿輸出を損ねると、六項目にわたり異議を申し立て勝訴した。
 WTO裁決は、綿補助金制度を停止し米国内でも綿作者に対する補助金の中止を要請した。米政府は十八日、米補助金制度が九二年のWTO規定の範囲に留まるものと反論し、十四項目からなる再審要請を行った。裁決は、三カ月以内に行われる模様となった。
 伯外務省の計算では、米政府の綿補助金は九九年から〇二年に百二十九億ドルを投じ、米国の綿輸出が国際市場で四〇%のシェアを占めるに至った。米テキサス・テック社は、米補助金制度が国際価格に及ぼす影響は二%に過ぎないという。よってWTO裁決は、見直しの必要があるとした。
 米政府の抗弁は続く。補助金の規模は九二年の水準以下であると、ブラジルの告発を否定した。しかし、現在の補助金総額は明示していない。資金力を盾にした国際市場での先進国の横暴な振る舞いは不変と、途上国はみている。
 米政府の控訴は、輸出金融でも俎上に上がる。米政府は輸出金融が、WTOの権限外だとしている。輸出金融制度に対する異議申し立てで、WTO裁決に従ういわれはなく無効だとした。米政府はWTO判断を、同機関趣旨の平和的解決条項に照合し誤った調停であると結論を下した。
 イタマラチー宮は、前回裁決で輸出金融制度に関する詰めが甘かったと判断した。勝訴裁決は得たが、それを保証する条項が不明瞭であった。WTO裁決は綿輸出に関し輸出金融の停止を命令したが、綿以外については明記していない。輸出金融を巡る伯米戦争は、仕切り直しらしい。
 一方、EUと日本政府も、バイロード法という米ダンピング法で対米提訴に踏み切る考えのようだ。バイロード法はダンピング法で得た資金を、国内産業の保護に充当するという法案。これは違法行為とされるが米政府は十月一日、資金の交付を実行した。このEUと日本の対米提訴には、ブラジルも参加する。
 米国の綿作者はWTO裁決を逆なでするように、補助金の増額を要求した。理由は〇四年、四度襲ったハリケーンによる被害の補償という。綿作地帯のジョージア、フロリダ、アラバマ三州の被害は、二億五百万ドルとされる。
 これまでの甘えが許されなくなった世界情勢から見て、米国の綿作は衰退の一途にあるといえそうだ。米政府はWTOで再度敗訴となるなら米国農業も転換期にあり、綿生産者は身の振り方を検討するように警告した。