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「愛国心」で国民の心理操作=専門学者が指摘=優越意識は実情が伴わず=現実問題から逃避

10月20日(水)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十九日】連邦政府が愛国心を高揚し植え付けようとすることで、ブラジルの知識人の見解が二分している。大衆を洗脳するために、ブラジル人は土踏まずがあるから世界一優秀な民族なのだといえば、多くの人々は潜在的に信じ込むという。

 政治番組が放映される度に愛国心という言葉が出てくるが、政府がいうそれは愛国心ではないと歴史学者のジョゼ・M・カルヴァーリョ氏は苦言する。政府のいう愛国心は、国民の心理操作のための道具だという。話法は表面的にはそのような言い方をしないが、これまでの独裁政権が使った典型的方法としている。
 人々を心地よい言葉で酔わせ、その気にさせる。少しづつ理性で納得できる言葉を注ぎ込み、大衆催眠を行う。その論旨に異論を唱える者は、ほとんどいない。現実の生活や政治の問題から、目を離させる巧みな大衆操縦法といえる。
 今年の独立記念日パレードを観覧した同氏は、スローガンが「ブラジルで最も素晴らしいものは、ブラジル人そのものだ」であったといった。自国の優越性を宣伝して、国民を自己陶酔させる愛国主義の古い便法で一種の阿片という。
 外国でも独立記念日は祝うが、単なる催しだ。ブラジルのように、何らかの見返りを求めるのは少ない。民族の誇りとしてのシンボルは、上から押し付けられるのが普通。真偽は別として、ブラジル人であることの優越感には役立つ。
 民族の優越感を一服盛られるのは、良い結果を招く。しかし、優越意識過剰となり海外へ行ってまで、優越感を振りまくと最低だとリオ国立大のマノエラ・C・クーニャ人類学教授は語る。政府が国民に自信を持たせるため、愛国心を吹き込むのは理解できるという。
 サッカーのロナウドや歌手のエルベルト・ヴィアナが、ブラジルの代表的シンボルとして活躍することで、ブラジル人の肯定的な人格が海外で認められる。いま評判の愛国心とは、ブラジル人の定義ではなくブラジルの庶民感覚なのだ。一方、農業技術の進歩では世界に人材の優越性を誇示した。これも一種の愛国心だ。 
 政治学者のルイス・ウエルネック氏は、政府のいう愛国心は辻褄が合わないと指摘した。債務問題で財務省のブラック・ボックスは、誰にも公開されない。PTとは国家問題の専門家ではなく、社会問題の専門家という評判だという。
 政府が愛国心を発揚して国民の共感を求めるのは、奴隷解放で絶大な支持を奴隷から得た当時の指導者に似ている。思想的には空虚で、現実離れしたお祭り騒ぎに過ぎないという愛国心の定義もある。
 USPのオリベイラ社会学教授は、政府の愛国心覚醒は労働者階級とPT支持者に向けた一種の大衆迎合主義だという。政権を支持した一般大衆に、党や労組の仲介を経ずに直接接触を試みるものだ。以前の一般大衆とはプロレタリア階級だった。いまは社会疎外者を指し、ヴェネズエラのチャーベス大統領が数合わせに利用している。