ホーム | 日系社会ニュース | 大豆『オーロラ』今期も堅調=ブラジルの食品会社近く輸入=〃地産地消〃も重要視=「付加価値つけ地域社会に寄与を」=イグアスー農協組合長が抱負

大豆『オーロラ』今期も堅調=ブラジルの食品会社近く輸入=〃地産地消〃も重要視=「付加価値つけ地域社会に寄与を」=イグアスー農協組合長が抱負

10月21日(木)

 パラグァイ共和国でも二〇〇四~〇五農年の大豆の蒔きつけが始まっている。近年、イグアスー移住地特産として脚光を浴びている非遺伝子組み換えで、タンパク質含有量が高い「オーロラ」も堅調に推移しているようだ。イグアスー農協組合長の井上幸雄さん(奈良県出身)によると、同移住地における日系農家の今期の大豆栽培面積は、前期より少し増えて一万八千三百ヘクタールと予測されている。
 栽培されるのは十五品種、その中の九種が非遺伝子組み換えだ。「オーロラ」の栽培面積は、八百から一千ヘクタールの間になりそうだ。
 今年は、岐阜県に本社のあるギアリンクス社と東京に本社があり、食材輸入大手の一社といわれている日清商会にオーロラを輸出した。アグロ・ニッポ社(本社・サンパウロ)も注目して農協と商談をまとめ、輸入手続きを経て、近日中に発送される見込みとなっている。
 同社が購入する大豆は、十一トンで、オーロラが六トン。残り五トンはラパス移住地産の大豆で、無肥料・無農薬栽培の健康食材だ。今年は商談の時期が良かったため、「オーロラ」は国際相場の二割増しで取引することができた。イグアスー地方でのオーロラの播種適期は十一月中旬で、翌年三月中旬から四月にかけて収穫となる。例年、二月頃が果実が熟す時期で、この大豆に興味のある人々が畑で手にとって見ることができるため、近隣諸国からの〃オーロラ見学〃ができそうだ。農協は八百ヘクタールの原生林も所有しており、遊歩道があるため〃エコ散策〃で、自然を満喫することができる。将来的にはオーロラ大豆を見て、原生林を散策し、オーロラ豆腐・油揚げ料理に舌鼓を打つ観光ツアーが脚光を浴びる可能性を秘めている。
 移住地はパラグァイの「不耕起栽培」の発祥地としても知られており、農協の前には「パラグァイの不耕起栽培はこの地から広まった/Capital de la SIEMBRE DIRECTO」の記念碑がある。「これまでは大豆そのものを商品として販売・輸出してきたが、今後は加工など付加価値をつける方策を探り、栽培面積拡張一辺倒ではなく、一定の面積でも経営が成り立つ営農形態を確立したい」と井上組合長は力説する。
 付加価値のついた製品をできるだけ現地で消費できるようにすれば、もっと生き生きとした地域社会作りに貢献できるはずだ、という。日本のJA(農協)が標ぼうしている「地産地消」を彷彿させるような、長期展望構想でもある。
 大豆景気に支えられて力量を蓄積してきたイグアスー農協が、組合員や日系社会の枠を越えて、地域全般の貧困緩和も視野に入れ、〃イグアスー(Yguazu)〃の信用を内外に確立して、パラグァイの他の地域、近隣諸国、そして、日本からの来訪意欲を誘発できる移住地作りに乗り出そうとしている。スペイン語でオーロラ(aurora)は「黎明」を意味する。
 移住地を訪ねて、オーロラの生育を見ながら、農協の長期展望構想に直接触れるのも訪問者の自己活力につながるようだ。