ミャンマーの政治情勢が危なっかしいのは今に始まったことではない。若いころ京都大学に留学し「日緬(日本とミャンマー)関係史」を研究したアウン・サン・スー・チーさんが自宅拘禁されているのが、いい例ながらこの国を支配する軍政は厳しい。一九八八年のクーデターに始まる軍部独裁は、この仏教国から民主主義を奪い取り専制政治を敷く▼スー・チーさんは、民主化運動の指導者でノーベル平和賞を受けたりして知られるけれども、ミャンマーでの活動は制限というようりは事実上は禁止されている。これが国際的な非難の的になり欧米は経済制裁を実施するなどの強い姿勢を崩していない。そんなところへ軍部内で民主派に理解を示していたキン・ニュン首相が更迭され自宅軟禁に処せられてしまった▼はっきとした理由は不明ながら「民主化を巡る路線対立」や「利権絡みの内部抗争」があったらしい。後任には強硬派が就任したが、この動きがミャンマーの民主化を一段と遅らせるのは間違いない。スー・チーンさんの自由も遠のいたし政治活動も更に狭められるの観測がもっぱらなのも頷ける。ミャンマーは旧ビルマであり、日本との関係は深い▼ビルマ型社会主義を標榜するミャンマーに対する国際世論の声は厳しい。だが、日本は柔軟な外交方針をもち経済援助などの手助けもしている。軍事政権には厳しくしなければならないが、この歴史豊かな国を孤立させる愚は避けたい。国際社会への仲間入りを助ける手立てを欧米と一緒に考える方向で進みたい。(遯)
04/10/21