10月22日(金)
サンパウロ市リベルダーデ区のホテルで行われた第一回日系農協婦人大会(ブラジル農業拓殖協同組合中央会主催、十九、二十日)で、「ガイジン」などで知られる映画監督の山崎チヅカさんが講演した。婦人らの大きな関心の的である日系家庭における子育てについて、「日本的価値観の押し付けばかりじゃダメ。子供はブラジル人。教育課程では親子の間で多くの対話が必要」と持論を展開するなど監督ならではの発言が相次いだ。
監督は近く公開を控える「ガイジン2」のダイジェスト版(八分)を会場に用意されていたスクリーンに映し出すと、「この映画は私の家族をベースに、日系四世代の女性の物語が描かれている」と語り、子供時代の話から切り出した。
「母親に厳しい日本的なしつけを受け結果、日本文化を拒否するようになった。二世は価値観が違うから、一方的に押し付けてはいけない」
自身の体験も振り返り、日本のどんな価値観を伝えるべきか、「考え直す作品を作ったつもり」という。
子育てに話題が移ると、「二世は価値観が違う。子供としっかり話すことで、価値観の違いを克服できるはず」などと語った。
その後、参加者の質問に山崎さんが答える形で講演は進められた。
―日系人には正直、誠実であるといった評価があるが、それに対してどう思うか。
「それはいいことだが、自己主張が足りないところがある。また、意見を持っていない人も目立つ。今後の世代はそこを考え直さなければならない。日本人(日系人)はこうあるべき、ではブラジルでは通用しないことを認識しなければならない」
―日本人は相手のことを思って身を引いたりすることがあるが、そうしたことをどこまで子供に伝えるべきか。
「大切なのは日本的価値観や文化じゃなく、母親として何を伝えるべきかを考えることだ。でも価値観の押し付けはいけない。子供の意見を尊重し、自分で物事の判断が出来るよう育てなければならない」
講演後は参加者から、「女性としての在り方に共感が持てた」「ブラジルの女性として自由に生きられる素晴らしさを感じた」などの感想が聞かれた。