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エルゾグ事件 公表写真は別人=政府が最終的に断=未亡人「なぜ核心に触れない?」=謎のまま迷宮入り

10月23日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】新聞記者エルゾッグ氏生前の遺影として報道され波紋を呼び、陸軍大将がルーラ大統領から叱責された中、ニウマリオ・ミランダ人権相は二十一日、掲載の写真は本人のものではないと発表した。政府情報部(ABIN)の調査では、当時左翼運動に関わったカナダ人神父レオポウド・ダストウス氏だとしている。またカンピナス大学教授のモリーナ鑑定士は非公式だが、二枚は本人のものと同一と述べた。
 左翼運動で拘束され死亡した新聞記者ウラジミル・エルゾグ氏の報道写真は本人のものではないと、ABIN報告を基礎に政府は公式声明を発表した。一方でカンピナス大学教授の鑑定士は、合成写真だが二枚を本人と確認している。
 人権相は同記者の未亡人クラリッセ・エルゾグ氏に、政府は事実解明にそごでないと報告したという。政府の措置について、関係者は一切口を閉じている。写真の人物はブラジリアのサンジョゼ・オペラリオ教会で三十一年間、牧会を務めたカナダ人神父であるかコレイオ・ブラジリエンセ紙が鑑定を依頼した。
 ABINへの鑑定依頼は、人権相から行われた。ABINは国家情報局(SNI)が七四年、エルゾグ氏の死亡一年前に左翼運動に関与した同神父を撮影したものと鑑定した。
 カンピナス大学で音響や映像、筆跡、文脈などを分析鑑定するモリーナ教授は、ABINの鑑定を誤りとした。三枚のうち二枚は、本人に違いないという。写真は再生の再生でフラッシュで修正しスキャナーで仕上げ、鑑定ができないように手を加えたとみられる。
 写真に写っている腕時計は、未亡人の証言通りオメガ印だ。エルゾグ氏はユーゴスラビア人で髪の生え方やはげ方、骨格が東欧人の特徴と一致する。側に寄り添うテレーザという女性は、神父が関係したかのように演出した合成写真と信徒らが供述した。同神父は九七年、帰国した。同記者の未亡人は、三枚にうち一枚が亡夫だと確認した。
 未亡人は写真の真偽云々よりも、なぜ事件の核心にメスが入らないのかを訴えた。表面的なことだけを議論し、肝心な部分は毎回葬られる。ブラジルの政府と軍は、どんな構造なのか。誰が政権を取っても不透明な部分があり、ブラジルを動かしているのは誰かか知りたいと未亡人はいう。
 モリーナ教授の鑑定報告を受けた人権相は、ABIN報告を発表済みであり同件は落着だとした。これ以上埃をたてて新たな問題提起をする考えはないと述べ、新事実が浮上しても同件は解決済みという。政府は、話題提供に加担しないことを強調した。
 ABINがカナダ人神父の写真だと報告したことで、ABINには未公開の資料を保管していることが明るみに出た。ABINにはSNI時代の資料が大量に保管され、公文書扱いか否かで保留となっている。しかし、軍政に関する大本営発表に、大統領が血相を変えてこれ程怒ったのは初めてといわれる。大統領府では同件をタブーとし、今後誰も口外しないことになったらしい。