10月27日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】世界貿易機関(WTO)は二十五日、ブラジルの輸出増加が国際水準を上回る順調な成績であったと発表した。ブラジルは〇四年上半期、輸出が昨年同期比で三一%増。その間の国際貿易の平均は、二〇%増であった。ブラジルの輸出が好調な背後には中国の過熱需要と国際商品の価格上昇、アルゼンチンの経済回復があったとみられる。しかし、〇五年の国際経済には、原油高騰の影響が現れるとWTOは警告した。
農産物輸出では〇三年当初、ブラジルは世界のトップを行くと思われたが、タイに次ぐ世界第二位となった。しかし、〇四年は前年を上回ると、WTOは予測している。米国の対伯輸入は全輸入高の一・五%に過ぎなかったが、ブラジルは対米輸出を前年比一三%増へこぎ着けた。
ブラジルは八〇年、年間二百億ドルを輸出して国際貿易の一%を占めていた。九〇年には〇・九%に落とし、ブラジルは年々世界ランクを下げた。〇三年は七百三十一億ドル輸出し、再び一%を回復したとWTOが発表した。
農産物輸出で見るならブラジルは〇三年、二百四十二億ドルを輸出して二六%増と成長し、国際貿易の三・六%を占めた。農産物の対米輸出は二一%増の二十八億ドル。これは、米国食糧輸入の三・七%に相当する。対米農産物輸出ではブラジルはまだ第四位で、カナダの二七%には、遠く及ばない。EUの対米食糧輸出は、莫大な補助金制度に支えられ米国市場の一八%を支配している。
他にアルゼンチンの経済回復が、ブラジルの貿易振興に貢献するものと予想される。アルゼンチンは〇三年、輸入を前年比七八%も増やした。〇四年は、すでに七三%増と回復。
〇三年の世界輸出ランクでは、一位ドイツが七千四百八十三億ドル。二位は米国の七千二百三十八億ドル、三位が日本の四千七百十八億ドル。続いて中国、フランス、英国、オランダ、イタリア、カナダ、ベルギー。ブラジルは二十五位と、ランクを落とした。
ブラジルの輸出は国内総生産(GDP)の二〇%を占め、経済成長の大黒柱となっている。大量のドル債務を抱えるブラジルは、輸出振興により外貨の獲得が急務となっている。しかし、経済成長が国家の資金需要に伴っていない。
ブラジル経済の財政収支でネックになっているのは、通商交渉での国際感覚の欠落といわれる。米州自由貿易圏(FTAA)での行き詰まりは、その最たるもの。メルコスル対EU交渉も座礁した。それに原油の高騰が追い打ちを掛け、〇五年度の財政収支に大きく響くと予想される。
世界は現在、多国間自由貿易が時代の奔流であるが、ブラジルは波に乗れないでいると国際貿易の関係者はいう。FTAAも対EUも〇五年に持ち越され、法整備が急がれるPPPs(官民共同出資法)もノロノロ審議が行われている。
順調だった〇四年の国際貿易に比較して、WTOは〇五年悲観説を唱えている。原油の高騰で国際商品が、圧迫を受ける見通しだ。〇四年の原油高は、アジアやアフリカ、南米経済の好調で消化した。日本経済の予想以上の回復も、国際貿易のけん引となった。原油高が中国経済に与える影響が、〇五年の懸念材料だ。