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移民のふるさと巡り~赤道の4都市へ(17)=賛美歌「慈しみ深き」が流れた=マナウス、483人の慰霊

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10月27日(水)

 気がつけば九月二十二日、八日間の旅も最終日だ。午前九時、コロニア・カショエイラ・グランデ地区の慰霊碑前で、三浦春寿牧師による慰霊礼拝が始まった。ギラギラと照りつける太陽の下、牧師は真っ黒な背広にネクタイを着用し、額からダラダラと玉の汗を流している。
 一分間の黙祷に続いて賛美歌「慈しみ深き」。マナウス近郊で最初に亡くなった移民、相馬文雄さんから数えて、この六月に亡くなった中崎一馬さんまで、物故者は四百八十三人にのぼるという。
 「彼らが見えない物として残したもの、例えば日本人への信頼などが、永遠に残ることは否定できません。見える物は一時的なもの、見えない物にこそ目をとめてもらいたい」と説教し、最後にコリント人への手紙の一説を読みあげた。
 礼拝に立ち会った西部アマゾン日伯協会の村山惟元会長は、「このようにじかに来てもらい、慰霊碑に参拝してもらうのが、私たちの心に一番響く」と感謝の言葉を述べた。「最近は電話やファクス、Eメールですませようというところが多いからね」。
 ふるさと巡り第一回のプロミッソンから参加している和田一男さん(ソロカバ在住)は「やっぱり各地で法要をして回るのが、この旅の一番の意義だと感じる。最近はちょっと観光が多いけど」と漏らした。
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 この地区には二十数家族の移住者が住んでおり、葉野菜や果物を生産している。と同時に老人ホーム「憩の園」、日本人学校、ゴルフ場などの日系関連施設が集中している。
 その一つ、日本移民八十周年を記念して一九八八年六月十五日に開館したアマゾン自然科学博物館(橋本捷治館長)を見学した。
 奥の棟には、体重百キロはあろうかという体長二メートル以上のピラルク五匹が、円形の大型水槽で悠々と泳ぐ。アマゾン広しといえど、澄んだ水でじっくり見られるのは、ここだけとか。一見の価値あり。
 時には体長三メートル、体重百五十キロを超えるというアマゾン最大のナマズ、ピライバの剥製も陳列されている。地元漁師に〃人喰いナマズ〃と恐れられているとか。小さいときは「フィリョッチ」と呼ばれ市場によく並ぶ。穴から入り込んで動物の体内を食い散らす恐ろしいカンジルーなど珍しい剥製が続々。昆虫館には世界最大のヘラクレス大カブトムシや十センチもあるゴキブリ、タランチュラなどの展示も。
 市立中央市場、豪華なアマゾナス劇場を回った後、ペイシャリア(魚料理店)で昼食。戦後第一回アマゾン移民の羽田重吉さんからぼた餅の差し入れが届く。義理堅い人だ。午後一時、マナウス空港へ。三時半に離陸し、三時間十五分でサンパウロへ到着した。
 サンパウロ市在住の小池淳子さん(59、熊本)は、「サンタイザベル文協が一番よかった。あんなに大きくて立派な日本人会があって驚いた」という。西田多美子さん(62、熊本)は「ベレンの法要がよかった。胸にジーンときました」。山崎英雄さん(81、鳥取)は「昨日のアマゾン川クルーズが一番。とても愉快でした」と語った。
 ベロ・オリゾンテから参加した赤木文雄・礼子さん夫妻は「まったくの、ふるさと巡りでした」と感想を語った。一九五七年にベレンから六十キロのグアマ移住地に入植した赤木さんは、そこで礼子さんに出会い結婚した。「昔の知り合いにも沢山会えたし、墓参りもできました」と満足そう。
 赤道直下で健闘するアマパー日本人会、アサイ椰子の森林農業、大豆栽培が急成長するサンタレン、ほぼ全滅した戦後アマゾン移民の第一陣、躍進する日本進出企業など、さまざまな場面で活躍する日本人・日系人の姿に触れることのできた旅だった。今年七十五周年を迎えたアマゾン入植。そこには、悲喜こもごものエピソードが幾重にも織り込まれていることが実感された。  終り
    (深沢正雪記者)

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