10月29日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】連邦警察は二十七日、サンパウロ市で企業のスパイ活動と政府高官の監視を行っていた容疑者五人を現行犯で逮捕した。五人は民間の興信機関クロール・アソシエートのメンバーであった。連警は、オポーチュニティ銀行リオ本店とオーナーのダニエル・ダンタスの自宅も家宅捜査を行い、PCファイルを押収した。同作戦は「シャカル作戦」と命名され、パルマラット乳業の不正送金と資金洗浄の特捜続編とされる。
政府高官も巻き込む企業スパイの実態が、明るみに出た。連邦裁判所サンパウロ市支部のオリベイラ裁判長は、連警のダンタス代表とカルラ社長の逮捕要請を拒否、物件押収にのみ止めた。
「シャカル作戦」はパルマラット乳業捜査の続編で、大掛かりな犯罪組織が背後にあることを突き止めた。発端はパルマラット社長の運転手が、イタリア・テレコムの内偵依頼を告発したことから始まった。
内偵依頼主の容疑が、オポーチュニティ銀行のダンタス代表とブラジル・テレコムのカルラ社長に及んだ。両者はクロール社と、内偵契約を結んだとされる。
連警はクロール社のサンパウロ市営業所七か所とクリチーバ、ブラジリア、リベイロン・プレット営業所を急襲し、PCファイルや特殊盗聴機器、違法録音のテープ、密輸タバコ、洋酒など十二箱を押収した。
クロール社はオポーチュニティ傘下のブラジル・テレコムと契約を結んだ。ライバルのイタリア・テレコムに関する情報収集をクロール社に依頼した。
ダニエル・ダンタス氏は、業界で資金繰りの魔法使いと呼ばれている。同氏はブラジル・テレコムの一%株主に過ぎないが、自由自在に同社を振り回す。各種の株を組み合わせるのは、同氏が編み出した錬金術だ。同氏はバイア州出身で、アントニオ・C・マガリャンネス上議の子息とは、竹馬の友でもある。
これら証拠物件は組織が行っていた違法取引による利権獲得や偽証、機密情報の漏洩、銀行口座の違法開示、電話の盗聴記録、監視カメラの録画、横領教唆などを証明するとみられる。同社には各種の諜報活動用の新鋭機器が設置され、高度の企業スパイ活動がサンパウロ市で行われていた。
同社には、外国の機関で訓練を受けた多数の臨時要員も活動している。ここでは係争中の機密訴訟書類も、容易に入手できる。
クロール社は二十七日、連邦令に抵触する行為は一切ないと声明を発表した。電話盗聴やサイト侵入、高官監視など全ての関与を否定。連警の捜査結果を待って、同社は対応すると声明を発表した。クロール社は三十年にわたり六十か国で情報収集を行い、民間の諜報機関では最も定評がある。コーロル政権の崩壊に、暗躍したのも同社だ。
監視されていたグシケン長官は、新政権就任以前から周辺の異変を感じていたという。七月は、サイトに不審な侵入を察知した。同長官は連警の捜査結果を待って、対処を決めると述べた。政府の対スパイ対策は、不十分であることも認めた。同長官のカバンに二二年までの情報通信計画があり、その中身が情報産業にとって垂涎の的なのだ。