ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 不安募る警察周辺=拘置所の脱走と病気で

不安募る警察周辺=拘置所の脱走と病気で

10月30日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】サンパウロ市内で拘置所のある警察署の周辺の住民は、脱走と病気まん延で毎日不安を募らせている。もともと拘置所は犯罪者の取り調べ期間のみ拘留する目的のため、警備などに重点が置かれていない構造となっている。このため脱走は安易で日常茶飯事。さらに定員ニ十人から三十人に対し百人以上が詰められ、まさに立錐の余地がない有様だ。このため衛生状態は最悪で、収容者の九〇%は皮膚病や呼吸器疾患の病人だという。周辺の住民は治安のほかに、病気の空気感染の危険に冒されている。
 モッカ区第五十七警察周辺の住民は今年に入り三回の脱走で多数の脱走者が逃げ場を失って家の中に入り込んできたことから、塀を高くしたり、入口や窓に鉄格子をはめ込んだりしている。さらにその上に鉄条網を張っている家もある。過去二回侵入された家は屈強なドーベルマンを飼ったおかげで三回目は門前まで来たが犬を見て退散したという。その住人は、脱走者は物陰に隠れて逃げるチャンスを伺っているだけで危害は加えないが、一番危険なのは追いかけて来た警官と射ち合いになることだと指摘している。また別の住人は、パトカーのサイレンと警官の大声が聞こえたら脱走だと察し、家の中はもとより外の全ての電気を点けるよう心がけている。
 保安当局によると、サンパウロ州内九十三の警察署のうち四十六ヵ所に拘置所があり、二万四千二百三十九人が収容されている。このうちサンパウロ市内は九千五百七十五人となっている。本来ならば取り調べが済んだら刑務所の未決囚となるが、州内の刑務所には十二万九千九十六人が収容されていて、新しく受け入れる余地がない。アウキミン州知事は拘置所廃止を宣言しているが、現状では実現しないとの見方が強い。