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14カ国から作品集まる=第1回海外日系文芸祭=JICA横浜で盛大に開催

11月4日(木)

 【東京支社】十月三十一日午後一時から横浜市中区新港「JICA横浜国際センター」で行なわれた第一回「海外日系文芸祭」(後援財団海外日系人協会、JICA横浜国際センター、角川書店、短歌研究社)は、国内外から約百二十人が参加し、初開催にもかかわらず盛況だった。文芸祭は海外日系新聞放送協会設立三十周年の記念企画で、今後も続けられるという。

 同協会の高木ラウル会長(ニッケイ新聞社長)はあいさつで、「みなさまの協力と努力がありまして、第一回祭を開くことが出来た。今後も続けますから、ぜひ宜しく」と語った。
 続いて、海外日系文芸祭実行委員会の石丸和人委員長(海外日系人協会常務理事)が開催までの経緯について触れ、「『季刊海外日系人』(発行・海外日系人協会)で連載中(現在十五回)の小塩卓哉先生(同文芸祭選考委員長)の海外短歌・俳句を紹介する欄『日系人の歌』だけでは、スペースも小さく、不十分だという声があった。そこで海外からの短歌、俳句を中心に世界的な規模の文芸祭を開いてはということになった。昨年の第三十回海外日系新聞放送協会大会で、小塩先生のサデェションと指導によって、文芸祭を開くことを決議した」と述べた。 
 その小塩氏は、「私が思ったことは、海外ネットワークと同時に、日本の愛好者も一緒に作品を寄せることが出来ないかということだった。そうでないと本当の意味の文芸フェステバルにはならないのではということを強く懸念したが、日本国内からも多く作品が寄せられた。私一人では到底できないこと。海外日系新聞放送協会はじめ、協賛各社のお力添えをいただき実現できた」と喜んだ。
 開催にあたり、実行委員会を発足。作品募集のパンフレットを各国に配布したところ、十四カ国から短歌七百十八句、俳句四百五十七句が寄せられるなど大きな反響を呼んだ。
 選考の結果、海外日系文芸祭大賞には植松秀子さん(アメリカ)の短歌〈そのかみの移民の亡姑の牡丹刷毛かすかなれども紅の匂ひす〉が選ばれた。
 また、俳句部門海外日系新聞放送協会賞は、斎藤光之ジュリオさん(ブラジル)の作品〈夏草や怒濤の如く牛五千〉に。
 短歌部門海外日系新聞放送協会賞は、瀬尾天村さん(同)の〈ブラジルのこの一点は吾が土地よ稔り豊かな稲を刈り居り〉に決まった。
 小塩さんの司会で進行した記念シンポジウムには、パネリストとして、亀田佳子さん(ハワイ)、上村南水さん(ロサンゼルス)、佐藤紀子さん(カナダ)、長澤重夫さん(ブラジル)が参加。それぞれの居住国の環境、短歌・俳句の歴史、現状、特徴などが語られた。その後、俳句選者の星野恒彦さん(国際俳句協会副会長、社団法人「俳人協会」国際部長)と短歌選者細江仙子氏(中部短歌会同人)による選評会があった。
 注目の短歌部門学生の部では、ブラジル・サンパウロ出身で愛知県立衣大高等学校二年生の上原クレイルトンさんが、海外日系新聞放送協会賞を受賞。
 〈春の夜桜の花びらおちてゆきボクの心もどこか悲しい〉
 上原君さんは受賞あいさつで、「小学五年生のとき日本に来た。当時はまったく日本語はできなかった。句は字あまりで苦労した」などと語り、大きな拍手が浴びていた。
 なお、第一回海外日系文芸祭実行委員会は次の委員によって構成された。
▼委員長=石丸和人▼委員=高木ラウル、小塩卓哉(選考委員長)、星野恒彦(選者)、細江仙子(選者)▼海外委員 亀田桂子(アメリカ・ハワイ)、真紀巴(アメリカ・ロサンゼルス)、佐藤紀子(カナダ)、多田邦治(ブラジル)▼事務局=岡野護(海外日系新聞放送協会事務局長)、渡辺裕子(同協会事務局)。