11月6日(土)
正午を少し過ぎた頃、鍾乳洞「カベルナ・ド・ジアーボ」に到着した。鍾乳石は、一センチ成長するのに二十年かかるという。途方もなく長い時間が作り出した巨大な鍾乳洞を前に、あちこちでフラッシュが光る。
「あれはパパイ・ノエル。こっちはコカ・コーラのビン」。鍾乳石を多彩な形に見立ながらガイドが案内してくれる。なるほど、と思わせるものもあれば、そうか?と首を傾げたくなるものもある。
「スペインのサグラダ・ファミリアみたい」「ギリシアの神殿に見える」。小さい頃、空に浮かぶ雲の形をあれこれ想像したのと同じ要領で眺める。
洞窟内を歩くことに危険を感じてか、外で待機する人々もいた。それでも暗く、すべりやすい鍾乳洞に果敢に挑戦するお年寄りの方が圧倒的に多い。さすがは健脚揃いの歩こう会だ。
谷沢イキさん(81)は、「危なっかしくて、手摺りに掴まって下ばっかり見てたから、ほとんど上を見れなかった」と話しながらもはしゃいだ様子だった。
空は一日中薄暗い雲に覆われ、ぐずついた天気だった。バスで隣合わせた女性は「暑すぎなくていいわ」と言う。確かに、ただでさえ、歩いて数時間バスに揺られて、また歩く…ということを繰り返しているのだから、結構疲れる。これ以上暑ければ、もっと疲れが激しいに違いない。
引き続き、一行が訪れたのはレジストロ移民資料館。ここで、県連ツアー参加者やアベ・ツリズモツアー参加者と鉢合わせた。
昔は海外興業KKの精米所だった建物を利用して作られたという館内には、製茶用揉捻機や製茶用乾燥機、ござ折り機など、レジストロ産業に関わりの深い品々も並んでいる。
セイロン島の茶・アッサム種をレジストロに持ち込んだ「ブラジル紅茶の創始者」岡本寅蔵氏の写真も史料とともにケースに収められていた。
陳列された火のしを指差して「私が来た頃はこんなのを使っていたよ」と話す人も。「あなた、ここにあるようなもの見たこと無いでしょ」と話し掛けられて、展示品を見て珍しがるのは私(記者)くらいかも、と気付いた。
レジストロ日伯文化協会会館は、昨年十月にイナウグラソンをしたばかり。木造で瓦葺きの会館はお寺のお堂を思わせる和風な造りだ。ガラス張りの引戸を開けると市民の憩いの場になりそうな広場が現れた。右手に別館の高齢者センター、左手に保育園が建つ。
文協内で販売されていたゴザ製品や紅茶を買い漁り、買物袋をぶら下げて、振る舞われたお茶を一服していると、文協会長が文協の説明をはじめた。つづく (大国美加記者)