11月11日(木)
福祉施設の運営資金獲得を前面に打ち出した慈善カラオケ大会。日系コロニアのカラオケブームに、あやかろうとあちこちで企画され、勢いを増しているようにみえる。しかし、事前の日程調整や審査員の顔ぶれなどが原因で、出演者数が変動。「慈善」と銘打つだけでは人が集まらないのが現状のようだ。会場を音楽劇場に設定するなど、〃派手化〃するところもある。
「昨年や一昨年と比べて、五十~百人減ってしまいました。回を重ねるに連れて、熱が下がっているのだろうか」
大手歌謡団体のある幹部は、近く主催する支援カラオケ大会について、そうぼやいた。プログラム作成の広告収入も減少気味だという。
「『慈善』を利用して、何か金儲けをしているのではないかと誤解されているのだろうか。出演者や訪問者に施設を知ってもらうことが、本来の目的なんですが…」。
カラオケ大会と同様、支援カラオケ大会も隆盛を極めている。援協傘下の施設ではやすらぎホーム、スザノ・イッペランジャホームの経営委員会が企画。第三者が実施した支援歌謡祭の収益が寄付されることも少なくない。
救済会(左近寿一会長)が運営する憩の園では、年に一回支援歌謡祭が開かれるほか、カラオケ愛好会などが慰問に訪れ、合わせて年に十回ほど施設のお年寄りが歌を聞く機会がある。こどものその(井口信理事長)、希望の家福祉協会(木多喜八郎理事長)でも同様のイベントが行われている。
外部の団体が企画・実施する場合、努力を惜しまなくても数千~数万レアルが入ってくるわけだから施設運営側は大歓迎だ。
一方主催者は、出演者の確保に頭を痛めているよう。まず問題になるのが、開催日。カラオケ大会はもちろん日系団体の行事と重なる恐れがあるので、日程調整が必要。
もっとも、「カラオケ関係者だったら、年間のスケジュールが頭に入っているはずですが…」(芸能関係者)。
次に、審査員。支援歌謡祭でも、普通の大会と同じ規定で進行するわけだから、歌い手も真剣に舞台に立つ。つまり、公正な評価が受けたいということだ。
しかし、支援歌謡祭になると審査員もボランティアでの協力になるため、身内のもので固めてしまいがち。審査員の顔ぶれをみて、出演希望者が逃げてしまうことになりかねないという。
さらに、プログラムへの広告掲載を多方面から求められることに対する広告主の嫌悪感も増しているそうだ。
慈善カラオケ大会の環境が厳しくなる中で、カンポス桜ホームは敢えて来年二月末、慈善カラオケ大会を実施する。会場は、市の音楽劇場。毎年、市の冬祭りでオーケストラの演奏が繰り広げられる場所だ。
大舞台で歌えることをPR。集客力を上げようという考え。「施設内の舞台では、人が集まらないと思ってそこに決めました」(関係者談)。
前述の芸能関係者は「事前に、マーケティングをしっかりやることが大切。慈善カラオケ大会を新規にやることは、非常に難しい。伝統と知名度のある大会が生き残っていくと思います」と話している。