11月12日(金)
昨年二十八万部を売り上げて、ヴェージャ誌の自己啓発書部門で国内最高を記録した『Quem Ama, Educa』(Editora Gente)を書いた日系精神科医チバ・イサミさんが、九日午後七時過ぎから、完成したばかりのサンパウロ市アクリマソン区にある大志万学院・松柏学園新校舎で、記念講演会を行い、生徒の親やOBら約百五十人を魅了した。
チバさんの同書は自己啓発部門で一位だっただけでなく、全書籍売上げランキング中でも、世界的なベストセラーとなってブラジルでも三十万部を売り上げたハリー・ポッター(翻訳書)に次いで二位だった。
テーマは「全人教育の重要性」で、世代が変わるとまったく世界観や考え方が異なる、現在の新しい家族関係のあり方を分かり易く講演した。
「自分が子どもの時、親から睨まれただけで言うことを聞いた経験のある人は手を上げて」とチバさんが問うと、半分近い来場者が答えた。続いて、「自分が睨んだだけで子どもが言うこときく人は」と問うと、ほんのわずかしか挙手しなかった。
「でしょ。科学が発達しただけでなく、時代の移り変わりと共に、このように教育のマシズモもなくなりました」と語ると、来場者は納得させられ、唸り声をあげた。「医学の進歩により五十年前の医者と現在では、大きくその役割を変えている。二十年後の医者がどのような役割を果たしているか、私にも想像できません」。
チバさんは舞台に用意された机に座らず、客席間際に立ち、身振り手振りを交え、まるで一人芝居を演じるように一時間半にわたって講演した。
「共働きがあたり前になり、子どもと過ごす時間が少なくなった今、家族のあり方が大きく変遷しているが、考え方は昔のまま。そのズレが家族の断絶につながっている」と分析した。
チバさんはかつてUSPで九年間教壇に立った経験や、サンパウロのカトリック大学(PUC)心理学研究所に在籍したが満足できず、現在のように年間二百回、週末を除いたほぼ毎日を講演して過ごす生活になった経緯も語った。
「それぞれの人が、どうしたらもう少し世界が良くなるか考えてください。子どもはその一例です。自分の周りから少しずつ世界を変えていきましょう」と語り、来場者の喝采で講演を結んだ。
川村真倫子松柏学園校長は「現代っ子たちの問題点を分かり易く説明して下さいました。全人教育の大切さが、さらに理解されたのでは」と感想を述べた。
この講演は、新校舎完成記念行事の一環として行われた三回の最後を飾った。