ブラジル日系文学会の季刊誌『ブラジル日系文学』は、会長が二世になったことにともない、「体制」をポ語化していくようである。部内で議論があったのだろうか、と少し気になった▼というのは、コロニアで発行されている文芸誌は、単純に「日本語で書かれた移民文学を掲載するもの」と考えていたからだ。日本人移民が渡航して来て、ブラジルという土壌に立ち、日本語で書いた芸術―先達たちは、それをおよそ百年間も活字にしてきた▼だから、書く人がいなくなれば、自然に消滅していくはず、(先行きは不透明ではあるが)発行誌をポ語にしてまで、続けていくのは筋が違うのではないか。違和感はその辺りである▼日本語の作者の高齢化に伴い、作品が減っていく。これはすう勢である。移民先国でそうなることは、第三者にとって〃実験〃を見るようで興味深いものがあるだろう▼『日系文学』は、先にハイカイ掲載にページを割いた。次は、武本由夫文学賞にハイカイ部門を設けるという。近い将来、ポ語の長い記述の作品も登場させるのだろうか▼文学会が、余力があって、別のポ語文芸誌に助力するというのなら、わかるが…。例えば県人会が、母県とのつながりを末長く存続させるために、人材も、使用言語もポ語化して活動する(母県側が許容すれば)のとは違う▼日本語という言葉、文字にこだわってこそ意義がある文学・芸術(の掲載誌)が、日本語でないとすれば、それは別のものではないのか。 (神)
04/11/12