11月13日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】ルーラ大統領は十一日、リオ市のプジョー・シトロエン自動車工場の新ライン落成式で演説し、自動車に関する税の減税を未年度から実施することを明らかにした。同大統領はこの減税でコストが引き下げられ、国内外で競争力をつけることによって、長期的に安定した企業体質が培われ、ブラジルの経済成長に貢献すると強調した。さらに「車を持つことは庶民の夢だ」とし、それを実現させるのが政府の責任との見解を示した。また自動車業界で今年に一万人余の雇用が増加したことに触れ、自分も一介の工員だったと過去を振り返った。減税について関係筋はこれまで根回しがあったことを明らかにしたが、いっぽうでサンパウロ州工業連盟は、特定業界にのみ恩典措置を取るのは手落ちだと反発している。
プジョー社のワゴン車新モデル、206SWの生産ライン落成式には同社のフォルス本社々長やリオ州ロジーニャ知事をはじめとする関係者が参列した。席上ルーラ大統領は同社がブラジルに投資したことに謝意を表した上で、かねてからの懸案だった減税を来年度から実施すると表明した。
これにより、連邦ならび州政府と業界が具体的検討に入るよう指示したことが明らかとなった。減税によるコスト・ダウンにより価格面で競争力がつき、需要が増えることが安定生産につながると強調した。また十五年から二十年の長期的視野に立っての企業戦略が必要だとして、暗に将来の設備投資増加を促した。
さらに、車は庶民の夢だとして、洋服を買ったり、海外旅行に出掛けたり趣味は人それぞれだが、車は高級品のため庶民に敬遠されてきたと話した。しかし価格を下げてその夢を実現させるのが政府の任務だとの姿勢を示した。またアジア諸国や東ヨーロッパの低価格車に対抗して世界市場におけるシェアを伸ばしていきたいとの意欲をみせた。
大統領は工場を一巡した後、記者団の質問に答えて、減税により国としては減収のデメリットは生じるものの、それを上回る効果が生まれることを強調した。まず、今年十カ月間にこの業界だけで、一万五百人の雇用増となったように、今後の失業解消につながり、所得も上昇して消費が活性化する。
現に過去十二カ月間で国民の収入は一一・〇九%増えた。さらに自動車は大豆と並ぶ輸出産業で、そのおかげで今年の輸出額は政府目標の九百四十億ドルを達成できる。そのためGDP(国内総生産)は年初予想の三・五%を超え、四・五八%へと上方修正したが、先週中銀から四・六%とすべきとの報告が入っていると述べた。
さらに大統領は、同社が工業技術訓練センター(SENAI)の卒業生五十人を採用していることを知り、「実は自分もSENAI卒業生だ」と明かした上で、技術訓練おかげで大企業の工員となって貧困から抜け出し、労働組合員から政治家へ、そして大統領になれたとの経歴を披露した。
業界ではこれまで政府関係者と減税につき、生産や販売計画に基づくコスト試算を提出して接衝を重ねてきたが、今後連邦、州政府との具体的検討を始める。業界筋によると最大の焦点は工業製品税(IPI)で、現在の九%から二五%までの税率の一率三%引き下げを要請しているという。
いっぽうで、今回の大統領の公約を聞いたサンパウロ州工業連盟(FIESP)は、自動車に限っての減税は不公平だとの態度を示し、工業界全体への恩典を要請すると正式表明した。