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 批評家でもきさくな人=長野県・田中康夫知事が来伯=史料館で小泉首相をチクリ=作家知事、移住者に関心大

11月13日(土)

 「首相は見たのかな? 見ても分かる人と分からない人がいるからね」――。長野県の田中康夫知事が、県人会創立四十五周年・県人第一アリアンサ入植開始八十周年の記念式典などに出席するため十二日、来伯した。同日午前には文協の移民史料館を見学。案内人に対し、先に来伯した小泉首相も同史料館を視察したか尋ねると、冒頭のように語り周囲を笑いの渦に引き込み、辛辣な批評で知られる作家らしい一面を見せた。

 タレント活動も盛んな田中知事。黒地に派手な幾何学模様の入ったネクタイ、襟元には白馬や太陽のワッペンというファッションで、ブラジル日本文化協会(上原幸啓会長)にさっそうと現われた。文協職員らに名刺を配り歩き、記念撮影に気さくに応じるなど、サービス満点だった。
 上原会長、日伯援護協会の和井武一会長、ブラジル日本都道府県人会連合会の事務局長ら〃日系ご三家〃の代表との懇談。
 現在の日系人口は百四十万人で、ブラジルの総人口に占める割合が一%に満たない現状を上原会長が説明すると、「でも、リーダーの輩出率は高いのでは」と知事は指摘。「はい、それが自慢です」と、上原会長は笑顔で答えた。
 「県人会を通して、日系社会への興味をもっている」(合木康典・長野県国際課長)という知事は最後まで、熱心に上原会長らの話に耳を傾けていた。
 知事は手土産の漆塗りのオルゴールと、知事名義の寄付金を三団体に贈り、「お元気にご活躍下さい」と言葉をかけ、史料館に向かった。
 案内人の先導で、館内をくまなく見学。移住初期の苦労を描いた「コロノ生活の思い出のビデオ」の前で足を止めると、全八分間、食い入るように鑑賞していた。「お茶がなかったことがつらかったそうです」と説明を受けると、「そうですか」と更に真剣な表情で画面をながめた。
 ブラジルの動物にも興味を示し、「これは食べられるんですか」と、展示されているカピバラの剥製を指した。また、一九三〇年代にお茶が生産されるようになったと知り、「すごいね、お茶まで作れるようになったんだ」と、驚嘆。
 史料館を一巡した後、感想を問われた知事は、「ブラジルの日本人は貧しかったが、大志を抱いて苦難を乗り越え、地盤を築き上げた。彼らは威張ることなく、地域と解け合ってきた。今の日本の方が国際化していないんじゃないか。昔は、ブラジルの日本人に見られるように貢献していたのでは」と語った。
 知事は文協訪問前に、イビラプエラ公園に開拓先没者慰霊碑を参詣し、献花。「あんなきれいな公園の一角にあるのは大変ありがたいことです。ブラジルの中で日本人が頑張ってきた、その結果でしょう」と、移住者をここでも讃えた。
 同日午後、知事はバンデイランテス宮でクラウジオ・レンボ副知事と懇談。夜は県人会主催の歓迎パーティーに顔を出した。十四日には長野県人会創立四十五周年の式典、十五日にはサンパウロ市から約六百キロ離れた第一アリアンサに向かう。
 その後ブラジリア、そしてアルゼンチンの同県人会を訪問し、帰国は二十日になる予定。