11月17日(水)
岩手県人会(千田曠暁会長)は近く、地方会員を対象に郵送による図書の貸出サービスを始める。サンパウロと地方との関係強化を目的にしたもの。会員の確保に生き残りをかけた同県人会の姿勢の表れだ。他の県人会には無い試みで、反響に注目が集まりそうだ。
モジ・ダス・クルーゼス、バストス、マリリアなどサンパウロ市近郊、奥地を初め、リオデジャネイロやベロ・オリゾンテといった他州に、支部が存在。かつては、それなりの活動を展開していた。
しかし、一世の高齢化などが原因で地方会員は減少。各地に責任者はいても、組織を形作るほど人数が揃わないのが現状だ。関係者の間では、サンパウロとの〃距離〃がどんどん離れていくのではないかと懸念されている。
歴史小説や岩手県に関する書籍を中心に約七千冊の蔵書を誇る同県人会の図書室。一般も無料で借りられることは、コロニアでも評判だ。地方在住者は、なかなか恩典に浴すことが出来ない。
郵送による図書の貸出は県人会に留まってほしいという、切実な思いが込められている。幹部の一人は、「日本語に飢えている会員が地方にいると思う。寝たきりの人だったら、サンパウロに来れません。こちらから、読みたい本を送ったら喜ばれるんじゃないでしょうか」と熱っぽく語る。
複数冊ある書籍の一部は既に地方に贈呈。希望者に回し読みをしてもらっている。
図書名や住所などを電話やファックスで連絡すれば、県人会が書籍を送付。返却も郵送で大丈夫だ。送付料金は、貸出の時に県人会、返却の時に借主がそれぞれ払う。借出し期間に特に制限はなく、一度に五~六冊借りられる。
事務局は「ブラジル全体の会員に呼びかけていること。特に一世の高齢者には、末永く付き合ってもらいたい」と話している。