先日、グァタパラ(移住地)文協の役員数人が来社したおり、ほのぼのと温かい一方、哀しいような話をきいた▼お盆に笠戸丸移民など初期移民が埋葬された旧ファゼンダ墓地に神父をともなって墓参したおり、ユーカリ林となった旧墓地の一角にアマリリス、グラジオラスが育っており、花をつけたのもあったというのである。「グラジオラスが生えていたんですよ」。役員たちは感に堪えない様子だった▼ひとしきり、草花の生命力の強さについて話が続いた。花があったところは、ユーカリ植樹者により、以前除草剤が散布された。雑草は枯れたが、地下の球根は影響を受けなかった。その結果、健気に生き続けていたというわけである▼誰が植えたのだろうか、の推理も行われた。戦後移民には、入植時墓地がなく、移住地から十数キロ離れたこの旧墓地に埋葬された。初めての死者は六四年であった。もし、当時死者の縁故者が植えたのであれば四十年、笠戸丸移民当時なら九十年くらいになる。球根は生き続け、移住地の先亡者の〃意思〃を受け継いだかのように、墓参してくれた生者を迎えた……▼同地文協は、七七年、移住十五周年のとき、「拓魂碑」を建立した。その際、すべてではないが、旧墓地の遺骨を移して埋葬した。移民百周年を記念して、旧墓地を保存する計画があるという。永遠の供養をしよう、と文協会員の気持ちが一致しているのだ。グラジオラスやアマリリスは、これからも咲き続けるだろうか。 (神)
04/11/24