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ブラジリアで抗議の渦=政府を厳しく攻撃=3団体1万6000人がデモ=肝心の大統領は不在

11月27日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】二十五日、ブラジリア市は政府に抗議する民衆で沸き返った。MST(土地占拠運動)、全国労組、学生運動グループ三団体のメンバー約一万六千人が、それぞれの問題の改善を求めてデモ行進した。一部過激派は軍警と衝突し、十人の負傷者と二人の逮捕者が出た。国会ビルと七台の車が破壊された。抗議は政府に向けられたものの、デモ隊は大統領を標的にし、口々に悪口を連呼した。これら団体は大統領および与党労働者党(PT)の支援団体で、場合によっては反対勢力に回るとの態度を明らかにしている。ここにきて、財界や党内の批判続出に続き、市民団体の抗議でルーラ政権は正念場を迎えたと言えよう。この日、大統領はパラー州に出掛けて不在で、デモ隊は肩すかしを喰ったかたちとなった。

 快晴に恵まれたブラジリア市で二十五日午前十時、抗議デモは穏やかに整然と始まった。MSTが主導する九千人のデモ隊が市内を行進する中、一部の過激派グループが国立農業協力改革院(INCRA)の本部に侵入しようとして警備の軍警と衝突し、十人の負傷者が出た。
 その後、騒ぎは起こらず最後の抗議集会でデモ隊は、政府に対し農務改革法案の早期成立と貧困の撲滅、失業の解消を要求する声明書を発表した。さらに遺伝子組み換え作物の採用には人的および環境への影響を十分調査するようとした内容を声明に盛り込んだ。
 司牧土地調停委員会の会長で、ここ一週間同市で開催された「土地と水の全国集会」主催者のトーマス司教は演説の中で、現政府の農地への取り組みは前政権から何ら進展は見せていないと非難した。さらに集会に大統領は一度も顔を出していないとし、「我々農民協同体はこれまで大統領を支援してきたが、今後の態度如何では反旗をひるがえし、野党勢力に付くこともあり得る」との態度を明らかにした。
 さらにエコノミストでブラジル農地改革連盟のサンパイオ会長は、自分は長年のルーラ大統領の個人的友人として支援を続けてきた一人だが、大統領が何ら手を打たなければ、過去の労働運動の経歴は抹消されることになるだろうと述べ、本音の政治を追及していくと強調した。さらに、これまで抗議を表明した者のみが報われているとして、今後は抗議集会を重ねて政府の目を向けさせることが肝要だと一致団結を呼びかけた。
 いっぽうで労組は労働条件の改善を、学生らは教育面の予算増額と学校の民営化をそれぞれスローガンに、双方合わせて七千人の抗議デモとなった。デモ行進は国会から教育省に向う予定だったが、国会前で学生ら三百人が、口々に大統領を「いくじなし」「裏切り者」と呼んで国会内への侵入を図り、軍警と衝突した。学生らは国会前の通称「鏡の水」の水槽に飛び込み、缶やビンに水を満たして軍警や国会ビルに投げ込んだ。これにより国会のビルの窓ガラスが割れたほか、七台の車が損傷した。軍警は学生二人を逮捕した。その後機動隊が出動したため騒ぎは収まり、デモ隊は行進を続行した。
 この間、ルーラ大統領はじめ政府要人はパラー州トックルイ発電所の新タービン建設式に出席のため、ブラジリアには不在だった。大統領はブラジリアでの騒ぎを知ってか知らずか演説の中で、発電所改修で、アパゴン(大停電)は二度と起きないと約束した上で、今年の力強い景気回復を強調した。さらに政府の必死の努力を解しない不平分子が一部にいると皮肉った。