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人情牧師=デカセギ支援奮闘中=ブラジルに恩返ししたい塩原さん=長野県で子弟の学習サポート=犯罪者の面倒もみる

11月27日(土)

 世話になったブラジルに恩返しがしたい──。ルーテル教会の牧師としてブラジルに足掛け十一年滞在した塩原久さん(71)が、長野県でデカセギ支援活動に奮闘中だ。デカセギ子弟の学習をサポートするほか、生活相談にも応じている。人の良さがたたってか、自動車購入のための連帯保証人に署名。既に負債の一部を肩代わりしており、近く残額の全てを支払わなければならない羽目になるかもしれない。それでも、ブラジルが好きという塩原さん。孤児になった日系子弟や服役中の非日系人の親類に会うため、来伯した。
 塩原さんは七二年~七六年、八八年~九五年にサンパウロ市内のルーテル教会で宣教。この間、多くの知己を得た。
 ポルトガル語を理解出来ることなどから、帰国後、デカセギ支援に携わってほしいとの相談を受けた。諏訪市内の公立校で教諭を助け、デカセギ子弟の補習をみるのが大きな役割だ。家庭訪問にも同行し、様々な悩みも聞く。
 現在は、年金暮らし。諏訪郡原村の自宅を開放し、ブラジル人に宿泊の便宜を図っているほか、看護婦や警察官にポルトガル語のレッスンも行なっている。
 「定住化が進んでいます。長期滞在者に目を向け、例えば定年後に年金が受け取れるような環境をつくってあげることが大切なのでないでしょうか」
 そんな塩原さんの元に、ある葬儀の依頼が入ったのは今年八月末のことだった。四十九歳の日系二世の男性が急性リンパ腫で急死。妻とは別居中で連絡が取れず、十二歳(小六)と十九歳(高三)の子が残された。
 二人は父の購入した自宅に居住。兄の方がアルバイトで生活費を稼いでいる。それだけでは不十分で教師や福祉の職員などが支援グループを組織。善後策などを練っている。
 遺品の中から、兄弟がタボン・ダ・セーラに居住していることが分かり、塩原さんがブラジルに向かうことになった。親戚に引き取る意思はなく、写真などを交換するだけで終わったという。二人は日本在住を希望しているので、日本で生活が続けられるように検討することになりそうだ。
 渡航費など様々な経費は自己負担になる。ボランティア活動することについて、「生きがいになっているからですかね」とさらりと語る。
 もちろん、痛い目に会うことにもある。一昨年、三十九歳の混血日系人に「デカセギ向けに食料品などを行商したい。そのために、大型トラックが必要で、連帯保証人になってくれないか」と懇願され、契約書にサインした。ところが、この男性がその後、トラックを売ってしまった上、住所を転々。連絡がとれなくなった。
 間もなく届いたのが、自動車販売店からの請求書。毎月三万五千円で三年のローンになっていた。塩原さんが立て替えざるを得ず、これまで三万五千円を三回分支払った。次回滞納すれば、約八十万円の残額を一括で支払うように警告されており、今一番頭の痛い問題だ。
 しかし挫折にもめげず、今回はパラナ州を訪れて、コンビニ強盗で服役中(懲役五年)のブラジル人男性の親戚に面会。事件の経緯などについて説明した。
 「やっぱり、ブラジルには友達がたくさんいるからですかね」と屈託なく笑う塩原さん。二十一日午後には、友人たちとサンベルナルドでワラビ採りを楽しんでいた。