12月3日(金)
十一月二十五日にSENACサンパウロで行われたサンパウロ州議会外国文化コミュニティ協議会の多文化教育セミナーでは、アフリカ系ブラジル人(黒人)など、様々な人種や共同体に関する問題が講演された。
カンピナース州立大学のジャイメ・ピンスキィ教授は、「世の中では、黒人に対する差別を〃黒人問題〃と言うが、黒人が問題を起しているのではなく、黒人を差別する社会の側が本来は問題なのだ。だから、黒人に関する〃社会問題〃という方が正しい」と語った。
教授は自動二輪が趣味なので、ある時、ピニェイロスの二輪店に修理を依頼した。担当したのは若い黒人の店員だった。一時間後、様子を見に店に戻って、くだんの黒人青年に尋ねた。その青年は胸をはって答えた。「ドトール、おいらはの仕事はセルビッソ・ブランコ(白人の仕事)ですぜ」。
「それを聞いて、私は愕然とした。なんら職業を明かした訳でもないのに白人である私は〃ドトール〃と言われ、その黒人が何気なくセルビッソ・ブランコという表現を使っている。当然、セルビッソ・プレット(黒人の仕事)なら、劣った仕事を意味する。白人優位社会の影響が我々の言葉遣いに反映し、黒人自身の無意識にまで深い影響を与えている。実に罪作りな表現だ」。
一般的に、黒人系の先祖といえば「奴隷」というイメージが付きまとうが、これも「ブラジルの〃神話〃の一つだ」と教授は強調した。「私のおばあちゃんは、自分がウクラニアで牛乳売りをしていた時、周りはみんな水を混ぜていたけど、自分だけは絶対混ぜなかった、と誇り高く語るのが常だった。黒人だってずっと昔から奴隷だった訳ではない。それ以前にアフリカ大陸で国を作り、宗教を信じ、文化的な生活をしていた。その時代のことを語り、誇ることが彼らの文化を尊重することにつながる」。
教授は、「ブラジルには一般に、移民子孫はすべからく〃良いブラジル人〃にならなくてはいけないという〃神話〃がある。つまり、ソタッキ(訛り)のあるポ語をしゃべる子孫は模範ではない、オリジン(出自)を無くすことは良いことだという、意識がある。しかし、私はそうは思わない」と訴え、例え訛りはあっても出自をしっかり持つ多文化市民こそ社会に有益な人材であるとした。
「我々はシダダニア・ウニベルサウ(世界市民)だと考える。新しい世紀を生きている。国籍に縛られるナショナリズムの世界は二十世紀、十九世紀の議論だ」と語った。
ナショナリズム、民族、宗教による紛争が世界各地で頻発する状況を憂い、「本来、どんな民族同士でも、違う点よりも共通点の方が多いのに、人は相違点の方ばかりを強調してしまう悪癖を持つ」と述べた。
最後に、「そのような様々な社会的偏見と闘い続けなければならない」と訴えた。 つづく
■各移民系社会が努力を=サンパウロ州議会外国文化コミュニティ協議会 連載(上)=文化継承は危機的状況=子ども時の教育こそ重要=「我々は〃根っこ〃を失いつつある」