12月4日(土)
十一月二十五日正午、現在編集作業中で、来年公開予定の映画『GAIJIN2』予告編が五分ほど上映され、山崎千津薫監督(三世)の講演が始まった。
イグアスの滝真上での高度感のある撮影、真夏のブラジルに特殊効果の〃雪〃を降らせる場面、見渡す限り広がるコーヒー大農場など、ブラジルならではの魅力溢れるシーンが満載されたこの映画には、延べ二千人の出演者が動員された。
祖母から聞いた初期移民の実話をもとに、勝ち負け抗争から現代のデカセギの場面まで日系百年の歴史を織り込み、女四代を軸にした物語を、山崎監督は作りあげた。
「日本人の役を日系人俳優にさせたのですが、これほど立ち振舞いが違うとは思わず、演技を付け直すのにかなり苦労しました」と、撮影秘話を披露する。
「日本人の動きというのは、今どき着物を着ているわけではないのに、どこか着ているような振る舞いなのです。特に女性は腰を入れずに、脚だけで歩く。日本人と日系人の立ち振舞いの違いは、やはり文化そのものだと実感しました。我々は外見的には似ているが、やはり違うのだと」。
日系人は自分の文化へのこだわりが強く、それ故、家庭内で摩擦が起きたという。例えば、妹の百合薫さんが非日系人と結婚したいと言い出した時、母親は「どうしよう。百合薫がガイジンと結婚するなんて。ガイジンは日本語話せないでしょ」とオロオロしたという。
その姿を見て山崎監督は滑稽に思い、「ママイ、私だって日本語しゃべったことないでしょ」と言った。「ああ、そういえばそうね」と納得したという。
監督の経験によれば、二世世代は親に反発しても、三世はむしろ原点回帰して、日本文化に興味を示すようになるという。「イタリア、ドイツ系もそうだと聞く。孫の世代になると徐々に戻ってくるようです」と自らの体験に重ねる。
「この国では、ユダヤ人がアラブ人と結婚できる。例え一世の時代には、そのことで喧嘩したり、殺しあったりすることもあるかも知れないが、孫の代になれば大丈夫」と語り、会場から拍手がわいた。
「知ることは、とても大事です。知らないことには、ついつい距離をおいてしまう。つまり、知らない異文化は実際以上に奇妙に感じ、抵抗がある。でも、いったん知識として知れば、現実に近づくことも抵抗がない。まず知ること。興味を持つことが重要です」。
監督はアチバイアで過ごした幼少時に、非日系の友人から「日本人は人が死ぬとフェスタをやる」と葬式のことをからかわれ、すごく恥ずかしい思いをしたという。「でも、今は違う。ある時、カンドンブレの儀式に立ちあったら、葬式ととても似たことをしていて安心した」。
祖母から学んできた多くのことを子孫へ伝える義務を感じており、そのためにこの映画を作ったと語った。
「映画の中の祖母は、最後の最後で日本へ戻り、自分の生まれた村を訪れるが、昔の面影はまったくないことに気付く…。しかし、我々の魂はいつも、国境にさえぎられることなく、帰る場所を求めているのです」と結び、大きな拍手が送られた。
昼食をはさんで午後は三つの小部会に分かれて討議が行われ、熱心に意見が交換された。 (終わり)
■各移民系社会が努力を=サンパウロ州議会外国文化コミュニティ協議会 連載(上)=文化継承は危機的状況=子ども時の教育こそ重要=「我々は〃根っこ〃を失いつつある」
■各移民系社会が努力を=サンパウロ州議会外国文化コミュニティ協議会 連載(中)=多文化市民こそが模範=社会的偏見と闘い続ける