12月15日(水)
【エザーメ誌】ブラジルにとって最も重要な法案の一つ官民合資法(PPPs)が、〇三年十一月十一日に国会に上程されて以来、審議の有効期限である三百七十六日を過ぎたが、法案成立の見込みが立たない。残念ながら国会議員は、ブラジルの発展を何と心得ているのか。
経済活動が上昇気流に乗った折角のチャンスを生かせない。PPPs法案はインフラ整備へ民間投資を引き出すための基本法だ。それが国会で埃を被ったまま一年以上眠っている。
遺伝子組み換え農産物の基準を決めるバイオ安全法も三百九十五日間国会に放置され、何も進行していない。税制改革は五百七十九日も棚ざらし。どれも法令となればブラジルの発展に貢献するものばかり。〇五年の経済成長率上昇に間に合うかどうか、未だに分からない。
国会議員の頭の中は、〇六年の大統領選で一杯らしい。経済発展のための一連の改革など、二の次のようだ。政治家たちは政治決着には懸命だが経済への思慮は乏しく、事業家や国民を戸惑わせている。
産業界では、決められた時間内に全てを整理しておくことは常識だ。長期や中期、短期計画と時間とのにらみ合いが民間企業の習慣となっている。それが即時に注文通り実行できないなら、係員はクビになる。
しかし、政治家は異なり、政界の制度改革や構造改革を行ってもブラジルではムダだ。時間の観念が乏しいから。議会の能率も八〇年以降落ちた。表決される法案は月間平均で、二十一から十三に減った。〇四年の表決は、地方選のために後回しとなった。
選挙が終わると政界地図が塗り変えられ、議会運営は難しくなる。選挙では対立党の打倒に政治家は一生懸命だが、ブラジルの繁栄など眼中にない。
今回の地方選では野党が大きく進出したので、議員らは行政府への協力など全く考えていない。政府を支えてきた連立与党は地方選後、内部分裂した。ルーラ大統領自らが、連立与党の結束強化に奔走している。上下両院議長続投のため大統領自らが根回ししたのは、多くの議員を怒らせた。
大統領府による暫定令の乱発も問題視された。議会が緊急法案の審議に手間取った場合に、特例として暫定令で問題解決を図ったと大統領府は抗弁した。暫定令にはメルカダンテ上議が、議会の機能を低下させると抗議した。
行政府と立法府の関係を改善する必要がある。ブラジルの運命を決するような重要法案を放置し、傍観しているわけにいかない。景気回復が見え出したところで外資を呼び込まねば、議会怠慢のせいで千載一遇のチャンスを逃す。
PPPsが〇三年十一月十一日、上程された。議会は小委員会を結成、法案の審議を始めたが、不況のため審議は忘れられた。国会は〇四年二月まで休会した。三月、下院はPPPsを可決したが、上院でジェレサッチ上議がPPPsは汚職の巣を産むと指摘した。政府内でも意見が二分した。
もう一つ、ブラジルの生死を分ける公共サービス監督基準局法案だ。同法案次第で外資の流入可否が決まる。同草案は四月十三日に提出された。公共サービスの専門家と野党が同案は基準局の自由を奪うと非難。同案は重要法案なのに酷評の末、議会から消えた。
議会では、不毛の議論がやたらと多い。クーニャ下院議長は基準局法案が重要法案だと説得しても地方選以後は、連立与党の議員でさえ選挙ボケしているという。
バイオ安全法に至っては十年来の攻防戦だ。遺伝子組み換え(GM)についての誤解は中々解けない。バイオ法には、幹細胞による難病治療や輸出用動植物の品種改良も含まれる。一月収穫のGM大豆は、バイオ法案が通過しないとGM専用倉庫がないため迷走する。民主主義とは、こんな面倒なものだろうか。