12月15日(水)
州立イザウチーノ・デ・メーロ中高(生徒数約二千人、カンポ・グランデ区)で、石川文枝図書室主任(二世、56)が子供たちに読書の習慣を付けさせようと大車輪のように働いている。七夕やかぐや姫の読み聞かせやに始まって、詩や小話の朗読大会を企画。また図書貸出カードを作成、自宅に持ち帰るように便宜を図る。図書館に通う生徒の数は増加。放課後などは満員の状態だという。
「週に一度は、図書館での活動日に当てる」。五~六年前、同校は新たなカリキュラムに乗り出した。宿題や課題を仕上げるためにしか図書室を訪れない生徒に、少しでも読書の楽しさを知ってもらうのが、大きな目的だった。
どうすれば、魅力のある授業が出来るか?図書室主任の石川さんは、知恵を絞った。出てきた答えは、日本の童話を読み聞かせることだった。ビリグイ近郊で生まれ育った石川さん。父から、かぐや姫や一寸法師などの物語を聞くのが何よりの楽しみだった。
元小中学校の国語と英語の教師。その経験から「子供たちは、外国の文化や習俗に結構、興味がある」とも思った。狙いはずばり的中。折紙教室や七夕の短冊かけなども取り入れて、好評を得た。
宮城県人会(中沢宏一会長)主催の七夕祭りの笹づくりにも協力。日本文化が知りたいと言って、日本語学校に通う生徒も出始めた。石川さんは「来年からは、メキシコやアルゼンチン、ウルグアイのものも教材に使っていきたい」と張り切る。
さらに、国から三千冊の寄贈を受けて勢いに乗り、昨年から朗読大会をスタート。既に詩をテーマに二回、小話をテーマに一回、大会を企画した。各クラスで予選を実施。その後全校生徒を前に決勝戦を行い、入賞者には書籍や文房具などの賞品を付ける。今年から賞状の授与も加えた。
朗読大会に先立つこと約十年。石川さんは日本で、図書館などを見学し、閲覧者が外部に持ち出せることを知った。帰国後、貸出カードの発行をPR。今、五百人~六百人がカードを保持している。
借りた図書を返さないのではないかという不安もあった。返却期限を過ぎると、罰金を課すことで解決を図った。カード作成の時に徴収する二レアルと合わせて、朗読大会などの貴重な財源になっているという。
「放課後なんか、図書室はいっぱい。私と助手だけではもう対応出来ないくらいになっています」。そう満悦そうに語る石川さん。三年ほど前から日本語教師佐々木佳子さんの私塾「カンポ・グランデ日本語教室」に通っている。
子供のころ、日本語学校で学んでいたが、中断。日本語の伝記や小説を読みたいと学習を再開させた。「野口英世が大好き。カンピーナスに行って、胸像を見てきました。日本語で伝記を読みこなすのが、今の目標です」と夢を膨らませている。