12月16日(木)
「農業には女性の理解と協力が不可欠です。農業で成功するのは、六〇から七〇%が女性の力によるものです。私は家内に感謝しています」という言葉に、南米諸国の農業研修生たちが大きくどよめいた。女子研修生たちの口からは驚嘆の声が漏れた。これは、コチア農業学校で(株)信州がんこ村の横森正樹社長が研修生たちに講義をした時の反応だ。
今回がブラジル訪問五回目という横森さんは、去る七日、過密日程の講演旅行の時間を割いて、水産コンサルタントの鴻池竜朗さんの案内でコチア農学校を訪問した。〃スター百姓〃の実践農業の話を受講したのは、米州開発銀行(本部・ワシントン)の協力を得て、オイスカ・ブラジル総局が行っている研修プロジェクトに参加しているペルー、ボリビア、パラグァイ、ブラジルの農業後継者四十四名と学校関係者だ。
大豆博士・有機農法の権威として知られている宮坂四郎博士の紹介で教壇に立った横森さんは、日本の信州での二十五年間の農業体験を踏まえて、農業の原点が〃土づくり〃にあることを、農業技師の長井邦夫さんの通訳を通して、研修生たちに分かり易く語りかけた。
そして(1)土の健康、(2)自分の健康、(3)経営の安定、という三要素が揃えば、消費者の安全と健康にかなう農産品を提供できるとして、土づくりのために木炭と木酢液に堆肥などの資源を組み合わせることが大切であることを説明した。
コチア農学校で研修生たちに自然にやさしい農法の指導を行っている佐々木エジガルドさん(二世)が、数年前、長野県で研修を受けた当時、横森さんと初めて出会い、今回が再会となった。横森さんは一九八八年にブラジル農友会の要望で研修生三名(二世と三世)を受け入れたことが一つのきっかけとなり、東南アジアの研修生を受け入れるようになった、という。
このような縁も横森さんとブラジルを結びつけているようだ。「農業は二十一世紀の花形産業となる。これからは安全性が重視される時代が来る。そのためには原点(土づくり)に戻ることだ。やる気になれば何でもできる。君たちは若い。いずれ結婚をするだろう。家庭生活でも中途半端はうまくいかない。経営も同じだ。常に前を見て、自信をもって行動しなさい」と結んだ。
「横森節」の本領が発揮され、初めて耳にするような〃農業の誇り〃に研修生たちは気持ちは鼓舞され、横森さんが次の講演地・アチバイアに向かう時間ギリギリまで質疑応答を行った。女子研修生たちが特に勇気づけられたようだ。