12月17日(金)
老人クラブ連合会の五十嵐司副会長は、「今、非常に危険な綱渡りをやっているところ。百周年の総会では、その場で説明されて、決められてしまった。もう少し慎重にやってほしいと言ったが、強行採決された。法的にはいいかもしれないが、次の致命的な欠陥がある。それは『大義名分や総意がない』、『日系社会の集金能力を五十~百倍も超えた予算で〃絵に描いた餅〃』、『距離的に遠く、みんな行かない』の三点だ」と分析した。
さらに、「もし失敗した場合、百周年の定款では役員の責任は限られている。定款上は責任追及できなくても、コロニアから浄財を集めるのであれば道義的な責任は残る。同時に、協力してくれる日本の人に対しても、後世に対しても大変不名誉なことだ。ぜひ、契約を結ぶ前にキャンセルをし、このような綱渡りをやめてほしい」と語ると、大きな拍手が湧いた。
ブラジル日本語センターの諸川有朋役員は、「私は奥地の人たちを思い浮かべながら、いつも発言している。今の百周年協会には、コロニア全体を考える意志が薄い。やり方が非常に一方的。コロニアのことをよくご存知ない人が決めるから、今のような状態になる」と述べた。
宮崎県人会の吉加江ネルソン会長は、「総会をする前から、あのJICAのプロジェクト(日伯総合センター)が選ばれることは、みんな知っていた。最初はパウリスタ通りに二本のビルを建ててセンターとする構想だったが、今回は二棟のビルがセンターでなく、その間にあるのがセンターだという。それでも同じだということで決議したが、いったいそれは認められるものだろうか」との疑問を投げかけた。
一方、百周年協会の吉岡委員長は全ての話を聞いた後、「日伯総合センターは六人のプロジェクト委員会が三十人の理事会に提案して承認されたもので、別に押し付けた訳ではない。その後、総会でも承認された。それを認めないのは理事会メンバーを馬鹿にするのと同じ。総会で決められたことに対して、そのようなことをはもう言わないでほしい」と声を荒げた。
「説明が足りないのは確か。今まではそれができなかったが、これからは説明することに決めている。県人会でも説明会をするので、ぜひ予定してほしい」と語った。
菊地副委員長は「大変参考になりました。耳が痛い。皆さんの意見を参考にし、我々も検討していきたい」と語った。
【記者の目】
「総会の承認を批判することは、理事会メンバーを馬鹿にすることだ」という吉岡委員長の論法はいかがなものか。普段、物静かな人柄だけに、珍しく声を荒げた様に意外な一面を見た気がした。
現在までの祭典協会の総会議決の仕方自体に問題があったことを問題にしているのであって、名誉を汚す、という問題にすりかえる性質のものではない。
吉岡氏は問題の本質を棚上げし、百周年の権威を盾に「説明はするが議論はしない」という態度を貫いた。議決する前にこそ、十分に説明議論が必要だと参加者らが口を酸っぱくして言っているのに馬耳東風、「決まって時間ができたから、これからは説明にいける。呼んでくれ」では説得力がない。
しかし、県連側にも問題は山済みだ。県連内での意見調整、統一を図るための会議を開催するというが、どのような方向へもっていくか。明確な指針が求められそうだ。今まで反対姿勢を明確にしてこなかった分、はっきりした態度表明が求められよう。
大事なのは建設的な志向をもった、理性的な話し合いを進めることだ。「どのように再考すべきか」「センター構想をどう修正するのか」。それとも修正に留まらず、総会決議を根本から見直す話し合いを求めるのか。その場合、会議で一部発言があったリベルダーデ再開発などの具体的な代案を出すのかどうか。
「総意があるか?」という現在、百周年祭典協会に向けている刃は、そのまま県連に向けられる。ただ反対するのでなく、建設的に進める配慮が必要になるだろう。
モジの鶴我博文さんは何度も「二世、三世の意見をもっと聞くべきだ」と強調した。一世中心に話合うように軌道修正するのか、それとも全伯の総意に見合った組織に根本から立て直すのか。来年五月のルーラ大統領訪日を考えれば時間はない。総意を得られそうなビジョンとは何か。批判する側も腹を固める必要がある。 (深)