12月23日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】ドル安による輸出後退の懸念を受けてパロッシ財務相は二十一日、政府はドル下支えのための為替介入を行わないことを明らかにした。この際、外資を導入し外貨準備を強化する方針で、努力と信念だけが経済発展につながると財務相は述べた。しかし、経済がようやく動き出したところに輸出産業がドル安の直撃を受け、経済界では一波乱が予想されている。為替不安は労働者党(PT)政権の試練といえそうだ。
先進五カ国は八五年、ニューヨークで財務相会議を開き、ドル高是正のため為替市場へ協調介入することで合意した。G5の合意を受けた世界の為替市場は、ドル売り一色となり空前のドル安を記録した。
それは米財政収支の是正であって、健全な為替市場の反映ではなかった。今回のドル安攻勢も、ドル通貨が野に放たれたためとパロッシ財務相はいう。そのような状況の為替市場に介入し、レアル通貨の適性水準を保つ考えはないとした。
財務相はPT党内きっての筋金入りトロツキストといわれ、政権の要を一任された。財務相はグシケン広報長官やロセット農地改革相とともに、トロツキストとしてコンビを組んでいる。健全財政一点張りの経済政策で、党内からも測り知れない圧力が掛かるものと予想されている。
一方、市場関係者は二十一日、為替が一ドル二・七〇一レアルに付けたが、ドルの下落は当分続くとみている。レアル通貨は二週間にわたって高騰した。中央銀行の為替介入で流れを止められないし、またどうにもなるものではないと関係者は傍観している。
ドルが二・五レアル・ラインに達するなら、政府は知恵を絞って欲しいと関係者は願っている。中銀は十二月、三億レアルをドル購入に投じ、国庫は五億ドルを保有した。ドルの叩き売りは、ブラジルの経済力を上回る。ドルの激流は、しばらく続きそうだ。
国内の投資家は、いっせいに手持ちのドル債権をレアルに交換し、先物へ投じている。しかし、過去二週間のドル暴落で被害を被っているのは輸出業者だ。輸出契約額が手中で日々、目減りしている。輸出業者は先を争って、輸出契約をレアル建てに切り替える手続きを行っている。
米国の貿易収支は一年間で六千七百億ドルの赤字を計上、経常収支が五千七百億ドルの赤字となった。そのため健全財政国通貨に対して、ドルを調整する必要が生じた。
ドル安は、ブラジルで次の問題を起こす。一、輸入の急増による貿易黒字の減少。二、中銀の外貨準備が増加するため、レアル通貨の流通量が減少。その是正のため通貨を発行し、レアルのだぶつきが生じる。三、投機資金の乱入が起こる。投機マネーで健全な経済運営が撹乱される。四、ドルとレアルの交換一時中止の可能性が生じる。ドル建て融資が増え、レアル交換が急増するため。五、通貨交換に課税される可能性。六、金利の急変。
中銀通貨審議会(COPOM)は、急激なドル安のドサクサを利用する投機仕手筋の暗躍を防ぐために緊急措置が必要としている。