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記者の目=5団体否定する百周年協会=日系社会の「総意」「民主的」とは?

12月25日(土)

 なにが「民主的」で、なにが「総意」なのか――。
 百周年祭典協会(上原幸啓理事長)の日伯総合センターに関する二十二日の県連代表者会議での最大の収穫は、祭典協会側が代表五団体合議制を「間違い」だと考え、理事長と三十数団体の副理事長が臨時総会で決議する現在の体制こそ「民主的」と考えていることが明らかになった点だ。
 これは、戦後の周年行事のたびに行われた五団体(文協、援協、県連、日文連、商議所)の合議制を良しとしないもので、山本喜誉司文協初代会長以来続いてきた戦後日系社会の権威のあり方を、根本から解体するような重大な問題だ。
 百周年協会は、今まで何の議論もなく五団体合議制を否定していた。このことを、文協以外の誰もが知らずにいた事実は深刻だ。上原会長は日伯文化連盟の会長として九十周年、修好百周年をその体制でやってきたはずだった。
 「私はチームワークでやっています。いろいろな意見を聞いてます」と口癖のように言う同理事長だが、そのチームとは五団体でないようだ。
 「本来なら毎週のように五団体が顔を突き合わせて議論して決めるべきことを、上原さんや渡部さんらが勝手に決めているのはおかしい」という中沢県連会長の問いかけは、五団体合議制を「民主的でない」と考える祭典協会には無意味なものだったようだ。
 理事長の代わりに論陣をはった渡部和夫補佐は、ブラジルという国体が代議士制になっており、各地方からの代表者が国会で議論することで民衆の声が政治に反映されていることを例に出した。多くの地方団体を傘下に抱え、臨時総会で主要事項を決議する祭典協会の制度をより「民主的」と解説した。
 これが「総意」を巡る議論の、根本に横たわるミゾであったことが今回初めて明らかになった。
 これに対し中沢県連会長は、「なにも五団体で全部決めようというものじゃない。まずサンパウロを、足元を固めないと話にならない」との意見を述べた。
 五団体を否定するなら、その分広く各地の声を聞き、副理事長三十数団体の意見が反映されているはずだが、実態はどうだろう。
 記念四事業の二番目に選ばれたアラサトゥーバ文化センターを推す、ノロエステ連合日伯文化協会の白石一資会長は先の臨時総会で「みんな総合センターのことばかり議論するが、我々のプランはどうなっているのか教えてほしい」と問いかけたが、祭典協会側は「まずは総合センターを決めてから、まとめて資金を面倒みる」と答えたのみだった。
 地元ノロエステから「このままでは、いったいどうなるのかと気が気ではない」と心配する声が寄せられている。
 日伯総合センターを巡る混乱――。それはセンターの内容よりも、「総意」に関する考え方の違いに起因するようだ。これは根の深い問題だ。言わば今までのあり方を否定し、一から体制を考え直そうとしている訳だ。
 理想論か現実論か――。
 百周年を契機に日系社会の団結を図る、という旗印はどこへ行ったのだろう。かつて南銀の橘富士雄氏は修好百周年サンパウロ委員長として日系団体をまとめ、見事に資金集めをした。今回その役目を担うべきは上原氏ではないか。今回明らかになった亀裂をどう埋めるのか。
 今こそ手腕が問われている。  (深)