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今年は文協創立50周年=記念事業盛り沢山=「移民100周年の前夜祭に」

1月1日(土)

 ブラジル日本文化協会創立記念日の十二月十七日、五十周年記念行事は動き出した――。敢えて、今年八月に五十周年を迎えた〃戦後日系社会の出発点〃とも言えるコロニア史跡、イビラプエラ公園の日本館を会場に、そのロゴマークを発表したことからも松尾治総合コーディネーターはじめ、五十周年記念委員会面々の意義込みがうかがえよう。出だしこそ遅かったが、興味深い事業が多く、滑り出しは良さそうだ。二〇〇五年の一年間を通して順次具体化される記念事業の概要を紹介したい。

■懸案の空調設備取付け■

 「百周年の前夜祭だと思って、しっかり取組みたい」と松尾総合コーディネーターは何度も強調した。〇三年五月に理事が総入れ替えして就任した現執行部には大きな行事を実行した経験がない。「是非とも五十周年を成功させて移民百周年につなげたい」と考えている。
 五十周年の目玉事業といえば、何と言っても記念講堂にエアコンを設置する大改修と、「日本文化の影響」展の開催の二つだ。
 創立五十周年記念事業委員会(上原幸啓委員長)全体の総予算は三百七十六万レアルだが、九つある小委員会のうち総予算の三分の一ずつを、大改修を担当する設備改修小委員会と、日本文化影響展を主催する「ブラジルにおける日本の目」小委員会に振り分けていることからも、その力の入れ具合が分かる。
 設備改修小委員会は、記念講堂をはじめ小講堂や貴賓室に空調設備を設置し、事務局を改修、一階奥にある日系美術館を手前にある会議室と入れ替える工事を予定している。
 空調設備を取り付けて電気配線も取り替えるなど、記念講堂だけで百二十万レアルの予算で、現在幾つかの日系企業に打診中だ。
 「日本文化の影響」展はブラジル社会や二・三世に向けて、幅広く文協の存在をアピールする意欲的な事業だ。文協内と外の三会場同時に開催するもので、日本文化の影響を受けたブラジルの諸側面を、写真やファッション、工芸、建築など様々なジャンルごとに代表的なアーチスト(日系、非日系を問わず)約百五十人に依頼して表現する、今までにない大規模な展覧会だ。

■注目の「日本文化の影響」展=文協の存在アピール■

 現在、文化省にルアネー法適用を申請中で、二月頃には正式に認められる予定になっている。それから企業に協力を依頼し、「早ければ六月十八日の移民の日ぐらいから展示会を始めたい」とコーディネーターの太田レオ進文協文化担当理事は述べた。
 同展の開催場所は文協含め四会場。以下、それぞれについて説明したい。
 (1)文協の移民史料館、貴賓室、大サロンでは写真展を行う。すでに三十九人の写真家がリストアップされており、彼らがすでに撮ってある写真の中から、日本文化の影響が顕著に現れているものを出品してもらい、一堂に展示する。
 サンパウロ美術館(MASP)の主任キュレーター(主任学芸員)であるホサカ・ルイス氏から参加の内諾を得ているおり、一流スタッフによる質の高い写真展になりそうだ。
 (2)日系画家二十数人らによる展覧会を行うのに相応しい場所として予定されているのは、サンパウロ州立絵画館(ピナコテッカ)。現在、リストアップを進めている最中だ。
 (3)Museu de Casa Brasileiraで予定されているのは、産業デザイン、ファッション、建築に関する展示展だ。宝石、照明、衣料、建物、各種製品などの様々な場面において日本的とみられる作品を陳列する。作者自らのコメントや解説をビデオに収録して、会場で放送することも検討されている。
 建物では、コクエイラのカザロン・デ・シャーや日本館、大竹リカルド氏の諸作品、レジストロ文協の新会館などが紹介されるようだ。
 世界的にも注目されるようになってきたサンパウロ・ファッションウィークで作品を披露する日系デザイナーたちの協力に加え、ブラジルを代表するキュレーターの一人、アデーリア・ボルゲス氏が全体をコーディネートする予定だ。
 「日系が作ったということにこだわらず、日本文化の影響の見られる作品全てを展示し、いかに幅広い分野にその影響が見られるかを俯瞰したい」と太田理事は説明する。
 (4)イビラプエラ公園の日本館では、伝統的な美術品や工芸作品の展示会をする。焼き物、木彫り、人形、金属工芸などの日本的な作品を、館内だけでなく日本庭園にも配置する。
 その他、五十周年の記念切手を発行する計画もあり、現在交渉を進めているそう。
 文協広報理事の小川彰夫さんも、「外の有名美術館と同時にこのイベントをすることにより、文協の存在を、五十周年を機会に広く知ってもらいたいと考えています」と語る。電通と業務提携をする大手広告代理店DPZと協力しながら、ブラジル社会からの文協に対するイメージを変えるという大きな課題にも挑戦している。

■記念出版も数種=討論会、セミナーなど多彩■

 目玉事業となる記念講堂改修と「日本文化の影響」展以外の事業は、以下の通りそれぞれの小委員会で取り仕切られる。
 顕彰・式典小委員会では文協初代会長の山本喜誉司さんの家族、創立会員らを顕彰、歴代会長写真額の取り替え、功労者や職員らの表彰を予定している。吉岡黎明コーディネーターは、「これから山本家の方に連絡をとるなど、資料収集を始めたい」と語った。
 広報小委員会では、ポスター、小旗、ペナント、記念メダル、記念カードと美術品のセット販売、記念Tシャツと芸術家の作品のセット販売などいろいろな計画がある。
 記録小委員会の第一部では、文協五十周年誌、半田知雄氏の『移民の生活の歴史』再出版、日系女性史。第二部ではビデオ・ドキュメンタリー「文協とその活動の記録」、DVD「文協の歴史」など。
 文化イベント小委員会では、「若者の夢」「日系女性」「日系人のブラジル社会への貢献」などをテーマに討論会、フォーラム、セミナーを行う。昔、リベルダーデの日系映画館で上映してヒットした名画の映画鑑賞会、おもちゃ週間や音楽祭などの子ども向けプログラム、青年向けアニメ・漫画の活動、文協図書館の情報化が予定されている。
 芸能小委員会では、能などの伝統芸能や現代のそれを日伯両国の演者によって上演する。慈善活動小委員会は、高齢者を対象に「豊かな生活」をテーマにした本の出版、講演活動をするなどの高齢者保護活動を実施する。
 最後の資金調達小委員会では、五十周年にかかる資金の調達を担当する。