「ちゃんこ料理」は大相撲の力士らが食べる独特なもので鍋物を中心に多彩な味付けで滋養も満点。野菜も数多く使うし植物繊維も豊富で魚介類を軸にし牛や豚・鶏の肉も鍋に入れ煮て食べる。相撲界に伝わるこの伝統的な食べ物が、血の出るような猛稽古と重なってあの逞しく巨大な肉体を育てる。ところが、近頃の若い力士は魚嫌いが増えてしまいもっぱら肉好みがいっぱいになってしまった▼福岡場所の九州は「アラ」(関東ではクエと呼ぶ)が名物で昔の力士は「アラちゃんこ」を食べたさに南の国に向かったという。なのに―である。今の若い力士たちは「アラ」の下ろし方も知らないそうだ。この魚は大きくなると三〇キロにもなる大きなものでサンパウロでの「ガロッパ」と同じものと思っていい。ご存じの方も多かろうが、刺し身にしてレモンを絞った醤油につけて食べるのが最高▼福岡の人々はなかなかに贅沢らしく「白い身を昆布で締めてからポン酢で食べる」らしいが、昆布までは行かなくとも、あの堅い白身の味は十分に舌を楽しませ一盃が二盃になり三盃もすぐ。こんな美味はないのに今の「ちゃんこ番」は、ぶつ切りにして鰯の鍋にぶち込んでしまうそうだから何とも悲しい。これでは「ごった煮」だと福岡の通人らは嘆く▼南の国・九州では今が「アラ」の旬。あの口がでっかくてちょっといかつい顔をし茶色に近い肌色にもたっぷりと脂がのっていることだろうにー。なんとももったいない話だ。 (遯)
05/1/6