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世界経済の変化に対応を=リクペロ元財務相=輸出好調は虚像=為替操作でドル安対処要=アジア諸国の抜け目なさ学べ

1月12日(水)

 【カルタ・カピタル誌】国連貿易開発会議(UNCTAD)の前事務局長だったルーベンス・リクペロ元財務相は、世界経済に対するブラジルの対応能力が低いことが、輸出拡張のハンディになっていると苦言を呈した。ブラジルが貿易の国際舞台で直面する問題点について同氏は、次のように指摘した。

 【ブラジルを取り巻く二〇〇五年の展望】国際貿易の成長率は〇四年に八・六%とされる。〇五年はさらに伸びて、一〇・二%に達すると経済開発協力機構(OECD)がみている。世界経済の成長基調はよいが、成長の内容をブラジルはよく観察する必要がある。
 まずは米国の双子の赤字。これは早晩、米国の輸入急減で世界経済に水を差すと予想される。次に想像以上の原油高がオイル・ショックを起こし、その後に景気後退が来る。
 再選されたブッシュ政権には、双子の赤字を是正しようとする姿勢がよく見えない。米国へ輸出攻勢を掛けるアジア諸国は、米国債を買いまくっている。現在の状況を見ると、米国だけが輸入をして世界経済を支えている。
 【ドル安の舞台裏は】米国には、原油高への対処法も貿易収支を改善する産業構造もない。これでは世界経済を狂わせ、景気後退を招くのが一目瞭然である。米国の代役は、日本にもEUにもできない。そのときブラジルはどうするか。
 米国民には生産より輸入が便利という考え方が定着している。食糧も同じ。生産するより輸入した方が、安上がりと考えるのは愚かだ。こんな産業構造の繁栄は砂上の楼閣。しかし、対処法としてブラジルが考えていることは、アジア諸国がすでに実行している。
 【ドル安と為替危機は】問題は、ブラジルの為替政策だ。現状を放置するなら、ブラジルの輸出は窒息する。政府関係者は、輸出は好調で、為替や通貨は心配ないというがとんでもない。為替や通貨の失敗は、すぐには結果が出ない。半年経ってから輸出が急減するが、その後遺症は国民のモラール低下にまで及び、深刻だ。
 ドル安の影響は二つ。輸入品の急増で消費スタイルが変わる。ブラジルの輸出競争力が大きく後退する。アジア諸国はドルが下落すれば、自国通貨も下げる。アジア諸国の抜け目なさと敏速さを、PT政権は分かっていない。
 【ブラジルの通商交渉は】通商交渉に悩まされたのはPT政権だけではない。ブラジルだけでなく南米諸国は国際市場への対応能力が低く、製品は価格や品質、種類などの面で劣っている。これらは交渉以前の問題で、交渉によって輸出のチャンスを生み出すには、対応能力の向上が先決といえる。
 【為替介入は必要か】為替操作はどこの国でも行われている。作為的で悪意に満ちた為替操作があり、自然の為替変動などあり得ない。決して政府の声明通りに、為替が変動することはない。日本やアジア諸国が、ドルに合わせて上手に踊っているのを見れば容易に分かる。ブラジルでは想像できないほどの出超を、アジア諸国は米国債の購入でコントロールしている。協調介入とかドル安合意などというのは、真っ赤なウソなのだ。
 【ブラジルの採るべき道】外国政府が課しているオレンジ・ジュースやエタノール、砂糖などの輸入障壁を撤廃させること。どんな事態が展開しても、恐れない為替政策を持つこと。輸出については、多様化と国際経済の変化に対応する能力の向上を図ること。これら実行できれば、結果として通商交渉は道が開かれてくる。