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コラム 樹海

  二〇〇億円が八億四〇〇〇万円に―。この桁外れの違いに驚いてしまうが、青色発光ダイオード(LED)の発明対価をめぐり中村修二カリフォルニア大学教授が勤務先だった日亜化学工業を訴えていた裁判は会社側が八億四〇〇〇万円支払うことで和解した。一審の判決では二〇〇億円の支払い命令だったから、中村教授も大いに不満だろうが、発明対価の訴訟は本当に難しい▼LEDの開発は極めて困難とされていたが、中村氏は白亜に勤務していたときに―この至難な技術を発明した。会社側はこの世紀の技術開発に対し二万円を払ったそうだ。これはおかしいと中村氏は東京地裁に提訴し「二〇〇億円の支払い」を求める。東京地裁は発明による独占的な利益を一二〇八億円、中村氏の貢献度が五〇%で六〇四億円と算定し、請求額二〇〇億円の支払いを命じている▼この判決には企業も驚いたし一般の人々も仰天したものである。この裁判を契機に発明対価をめぐる訴訟が相次ぎ人工甘味料の裁判では企業が一億五〇〇〇万円を支払い和解している。恐らく、こうした訴訟はこれからも増えるに違いないが、もう「会社員は使い捨て」という企業の考え方は通用しない▼最高裁からも「発明社員は社内規程を超える対価を請求できる」という判断を出しているし、企業も会社員も「発明対価」に関する考え方をきちんと整理しないといけない。中村氏が受け取る八億四〇〇〇万円は過去最高額だが将来的には五〇〇億円もありうるのだし、もっと真剣に検討し議論するべき課題であると思う。   (遯)

05/1/13