1月15日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】ルーラ大統領とパロッシ財務相は十三日、フルラン産業開発相が政府の為替とインフレ抑制政策を批判したことに対して不快の意を表した。特に気に障ったのは、政府要人が民間人の立場で通貨政策を批判したこと。産業開発相は政府と財界の板挟みの末に苦言を述べたものと理解された。政府は同相を経済政策の理解者とみなし、声明の飛び火を警戒している。
産業開発相は、真意がよく伝わっていないと述べた。批判したのは目標インフレ率を設定するシステムではなく、公共料金が原因であるインフレを高金利政策で抑制することだと同相は弁明した。
大統領は口を閉ざし、同件に一切触れなかった。ただ政府首脳らの間では不満の意を表しており、産業開発相との見解の相違を表ざたにしたくないようだ。同相は現政府の立役者であり、同じ塹壕の中で味方に向かって発砲する兵士ではないと大統領はみている。
場慣れした財務省官僚は、産業開発相の個人プレーとした。大統領自身が太鼓判を押した経済政策を批判するのは、下野の伏線と理解している。労働者党(PT)本部では、火中の栗は拾わないと発言を避けた。今回の問題は、為替と通貨政策を巡る産業開発省と財務省の衝突ともみられている。
一方、工業界は為替危機と位置付け、貿易黒字の激減を予測。今後の設備投資を損なうと、全国工業連盟(CNI)のモンテイロ会長は警告した。サンパウロ州工業連盟(FIESP)も、産業開発相の勇気ある声明を書面で称賛した。
デルフィン・ネット下議(大衆党=PP)は、経済政策についての産業開発相の声明は「熟慮の上の国家に対する警告」であったと評した。政府首脳部は国債の評価しか見ないが、ブラジル経済は今、崖淵にある。一ドル二・七レアルでは、輸出は商売として成り立たない。これは傍観者の感想ではなく、当事者の生命を賭した切実な訴えであると述べた。
同下議は、ブラジルの奇跡時代に財務相を務めた。現行政策は、混迷の中であがいたものと同下議はいう。中銀は低率インフレの狂信者だが、インフレ五・一%達成には、それに見合う経済成長遂行が前提条件であり、その大切な部分を中銀は見落としているとした。〇五年の経済成長率が五%で、インフレ五・一%達成は絵空事だという。
同下議は混迷について次のように説明。中銀の手法では、インフレ五・一%達成のために金利が引き上げられ、経済活動にタガがはめられる。低率経済成長下で国民総生産(GDP)に対する公共債務は増加し、カントリーリスクが悪化。高金利とレアル高で、輸出が総討ち死にとなる。投資格付けランクは続落する。
ルーラ政権が目標インフレ率を設定したのはよいが、政府要人は現実が見えない盲人ぞろいが問題。IGP(総合物価指数)で算出された〇五年度インフレ率は、電気と電話料金で一悶着を起こすのが必至。市場原理に任せた方が、合理的だと同下議はいう。