1月20日(木)
神戸新聞の最近の企画記事「日本のかたち 在留外国人に『平和』を問う」に、兵庫県姫路市在住の大畑カズヨシさん(51、ブラジル出身)が登場した。
約八十年前、祖父がブラジルに移住した日系三世。一九九一年に訪日し、九六年に移り住んだ姫路では、日系ブラジル人社会の交流促進に努め、ボランティア活動などに積極参加している。
大畑さんの今回の発言要旨は「自国の立場 世界に示せ」。
× ×
ブラジル人のサッカー熱は有名だが、同じくらい熱くなるのが選挙。友達の前で、支持政党や候補者の悪口をへたに言うと、袋だたきに遭うよ。
日本でも今、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の是非が議論されているが、ブラジルではすでに整備済み。そして、選挙で投票したかどうかを記録し、投票を怠る者は公務員になれない、親の遺産を相続できない、などの罰則がある。
厳しい投票義務があれば、政治への関心は自然に高まる。両国は共通の課題を抱えているのに、問題意識に差があるのは、投票義務の厳しさの違いだと思う。
例えば、両国はいずれも米国に頭が上がらず、国際紛争のたびに、協力を強いられる。また、米国は南米諸国が自立するのを恐れて経済協力を妨害している。同様に、日本企業の南米進出を制限するなど、日本の経済成長を警戒している。
こうした状況を、ブラジル人は苦々しく感じているのに、日本人はまるで平気。米国と対等に付き合っていると勘違いしている。新しい首相が選ばれるたび、近隣の国よりも先に米大統領のご機嫌を取りに行くことを、異常と感じるべきだ。
昨年のアメリカのテロ事件の後、「旗を見せろ」という言葉が話題になった。報復攻撃に積極参加するだけでなく、自国の立場を世界にはっきり示すという意味で、同じ言葉を日本政府にぶつけたい。
ブラジルでは、住基ネットが民主主義の浸透に、大きな役割を果たした。しかし日本では、公務員による個人情報漏えいが発覚するなど、頼りない。危機感を持って権力を監視しないと、経済がますます悪化する。