1月20日(木)
サンパウロ州の交番制度確立のため、サンパウロ州軍警察の要請を受け、JICAの公共保安・地域警察活動プロジェクトが今年から実施されている。三年間、日本の警察官が滞伯し、指導にあたる。軍警では日本に警察官を派遣し、十年ほど前から日本の交番制度を導入しており、現在、同州内にはブラジル特有のポスト式のものや移動式のものを含め約二百二十の交番がある。一九九九年から〇一年の間には日本からも四人の専門家が派遣され交番制度のセミナーを行ってきたが、実際に日本の警察官がブラジルの交番制度に対し意見を出し、治安対策、人材育成、勤務指針のマニュアル作りを行うのは今回が初めてのことで、世界的にもマレーシア、シンガポール、インドネシアに次ぎ四例目。
同プロジェクトではサンパウロ市内に八つのモデル交番を選定。地区ごとに犯罪の種類を考慮し、住民の意見を聞きながら治安対策を練る。
七日、警察庁から生活安全局地域課の市村和彦課長補佐(52)、徳田秀輝警部(47)が来伯した。市村課長補佐は一カ月間の任務期間中にモデル交番を選定、徳田さんは一年半滞伯し、指導・マニュアル作成などの任務に携わる。同プロジェクトは三年を予定し、徳田警部の帰国後は後任が一年半の任務にあたる。市村課長補佐と徳田警部はサンパウロ州軍警総司令部に特設された事務室で十日から勤務を始めた。
市村課長補佐はサンパウロ州軍警察を「個室も用意してくれるなど意気込みを感じます」と評価。徳田警部は「日本を代表して来ましたので、誇りと責任感を持って、少しでも目標を達成できるように頑張っていきたい」と意気込んでいる。
同プロジェクトの実施に当たっては、昨年の四月に日本から調査団を派遣するなど対策を練ってきた。社会構造が違うため、日本の制度をそのままブラジルに適用することはできない。
市村課長補佐は「サンパウロ州の予算や、軍警察の組織構成、また文化や歴史を考慮する必要がある」と同プロジェクトを進める上での注意点を語った。
サンパウロ州軍警総司令部の谷口潔中佐は「ブラジルの場合、交番を一つ作るのに二十人以上の人手を確保しなければならない場合がある」と語り、交番自体の治安面を考慮する必要があると指摘した。
十八日には日本の交番制度を紹介するため市村課長補佐が警察官向けの講演。予定を大幅に上回る六十人近い聴衆が集まり、関心の高さを伺わせた。
二〇〇四年四月現在、日本には約二十五万人の警察官がおり、そのうち三六%が交番や駐在所などで勤務している。
それら地域警察の活動にはパトロール、巡回、補導、警備、交通誘導の他、日本の交番の特徴的なものとして、住民の要望や意見を聞き、管内の実態を把握し住民との関係を作るための『要望把握活動』や、犯罪を未然に防ぐことや、拡大防止のために新聞などを通して治安情報などを住民に向け配信する『情報配信活動』を挙げた。
交番の設置基準は「昼夜間の人口、犯罪の発生状況、行政区による」と説明。また、地域警察が「日本における全犯罪の七〇から八〇%を検挙している」と交番効果を強調すると、会場もにわかに沸いた。講演後の質疑応答では、住民向け広報紙についての質問が飛び出すなど、聴衆は真剣に講演に耳を傾けていた。
JICAサンパウロ支所の村本清美技術担当は「サンパウロには日本人や日系人も多く住んでいる。将来的に犯罪率が減少し、ブラジル全土に交番が広がって欲しい」と期待をよせる。