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ブラジル人、イラクで行方不明に=武装勢力が拉致か=発電所工事現場に到着直後=公表されない拉致事件も

1月21日(金)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十日】イラクの武装勢力による車両襲撃により、ノルベルト・オデブレヒト建設会社のブラジル人出向社員が十九日、行方不明となった。同社員は、ベイジ地方の火力発電所改修工事の現場監督だった。武装勢力は工事現場を襲い、同社員を拉致したとみられる。現場の警備に当たっていたイギリス人とイラク人の警備員は射殺された。ブラジルはイラクと国交関係がないため、外務省はヨルダンの在外公館から係員を派遣して実情調査を行っている。

 武装勢力は十九日朝、工事現場へ到着した装甲車二台を襲った。オデブレヒト建設会社のブラジル人社員の氏名は、社命により秘密に付された。イギリスの警備会社ジャヌシアン・セキュリティ・マネジメントの警備員であるイギリス人とイラク人の二人は、射殺された。
 米軍スポークスマンによれば、武装勢力は火力発電所の破壊を目的としており、たまたま到着したブラジル人社員は、巻き添えを食ったという見方をしている。
 ブラジル政府は九一年の湾岸戦争以来、イラクとは国交を断絶した。コロンビアへ外遊中のセウソ・アモリン外相は、ブラジルは米軍の同盟国としてイラク介入に参加していないが、武装勢力が同盟国へ圧力を掛けるため、ブラジル人も拉致の被害対象になると述べた。
 フランス・プレス紙によれば、十九日の武装勢力による襲撃で外国人三十人が拉致されたもよう。ブラジル人も、その一人と見られている。
 オデブレヒト建設会社は目下、あらゆるルートを通じて行方不明となった社員の身元確認に奔走中と発表した。本人の安全確保のため氏名や出身地、社内の地位については一切公表しないという。同社はブラジル人要員を多数、イラクを始め世界各地へ送っている。
 事件の起きたベイジ地方は、イラク最大の原油採掘地帯。ここからトルコに向けて輸出用のパイプ・ラインが敷かれ、産業の心臓部と呼ばれる地域となっている。オデブレヒトは〇四年四月、米系多国籍企業から設備改修契約を二件交わしていた。
 ワシントン・ポスト紙によれば、オデブレヒトは火力発電所の他に、精油所のガス・タービン設置で現地の労働者一千人以上を雇用する計画がある。設備の改修は急を要するため、通常の二倍のノルマが課せられている。
 ブラジル人が誘拐拉致の標的となったのは、初めてではない。イラクでは最も危険と見なされる地域に、多数のブラジル人出向要員や人権団体の関係者が派遣されている。公表されずに解決したブラジル人拉致事件は少なくない。
 身の危険を承知の上で現地へ赴く、フロンティア・スピリットが旺盛なブラジル人は多い。卑怯で臆病な人間には、理解し難い何かがある。時代を動かすために名も命も要らないブラジル人が、イラクばかりではなく、コロンビアやアンゴラ、コーカサス、チェチェンなど世界の危険地帯で活躍している。